濱口梧陵記念館(稲むらの火の館)庭園Inamura-no-Hi no Yakata Garden, Hirokawa, Wakayama

日本遺産“百世の安堵”の中核施設。津波から村を救った“稲むらの火”のモデル・濱口梧陵の旧邸と氏の愛した庭園。

庭園ギャラリーGarden Photo Gallery

濱口梧陵記念館・稲むらの火の館について

「濱口梧陵記念館」(はまぐちごりょうきねんかん)は日本遺産『百世の安堵~津波と復興の記憶が生きる広川の防災遺産~』の構成文化財となっている大正時代のお屋敷。広川観光の拠点“稲むらの火の館”内の施設の一つで、現・ヤマサ醤油の幕末期の当主・濱口梧陵が愛したという庭園が残ります。

2021年春に初めて和歌山県広川町を訪れました。
元々は重要伝統的建造物群保存地区の和歌山県湯浅町に行きたいと前から思っていて――。んで調べる段階で、湯浅町と隣接する(最寄りがJR湯浅駅で同じ)広川町に文化財の古民家が残っているなあ、ということに気づき。むしろ庭園という点に於いては広川町の方に気になる場所が…。

ということで広川町の庭園を幾つか紹介。湯浅駅からのレンタサイクルすれば10分も掛からない程の距離の広川町の中心部(旧称・広村)。

そもそも“稲むらの火”“百世の安堵”とは。江戸時代末期、1854年に発生した安政の大地震。夜中に発生したこの地震の直後、海が引いて大津波が来ることを察知した濱口梧陵は“稲むら”(ススキや稲を積み重ねたもの)に火を放って村人に危機を知らせました。
実際に大津波が発生し、和歌山湾に面した広村は壊滅的な被害を受けましたが、梧陵の機転によって避難した多くの村人の命は救われることに。

その後、濱口梧陵は私財を投じて現在も残る“広村堤防”)を造成。この事業に背景には次の津波の被害に供えることは勿論、津波で家屋や仕事を失った村民への雇用の創出という目的も。
“百世の安堵をはかれ”というのが梧陵がこの時残した言葉。そしてこの堤防によって昭和年代に起こった南海大地震の際の4~5メートルという津波から村は守られました。

この出来事が明治時代に小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)によって作品化。元のタイトルは『A Living God』(生ける神)。国内の教科書には『稲むらの火』のタイトルで紹介。
安政の大地震が起こった11月5日は“世界津波の日”にも制定され、津波や防災に関する教育施設として『稲むらの火の館』は2007年に設立されました。

で、濱口家について。江戸時代以前から当地の大地主・庄屋であり、江戸時代以降は醤油の醸造業で繁栄。千葉・銚子に本社を置く“ヤマサ醤油”を経営しているのが“西濱口家”

江戸時代初期から商売の拠点は関東・江戸に置きつつ、そこでの売上は本家のあるこの紀伊広村の地域経済や発展のために還元。後日紹介する国指定重要文化財『濱口家住宅』は“東濱口家”のもので、濱口梧陵は“西濱口家”の出。(尚、現在の位置関係だと東濱口家の方が西にある)
長くなったけどとにかく町の名士であり町の恩人というわけ。

この濱口梧陵記念館は“西濱口家”の旧邸宅の一部。1915年(大正4年)に火事に遭ったため現在残る建物の大部分はそれ以降(翌年の1916年)に再建された近代和風建築ですが、茶室と庭園は焼失を免れそれ以前より残るもの。
なので幕末~近代を生きた濱口梧陵も眺めた・利用した茶室と庭園ということで。紀州の青石ではなく赤みがかった飛び石が中心なのが一つの特徴。

そして庭園で最も大きな高麗燈籠は加藤清正が朝鮮出兵より持ち帰ったといういわれがあるもので、紀伊国の武将・湯川氏が所有していたところから濱口梧陵が譲り受けた、ゆかりの石造物。

重伝建・湯浅と比べると観光客の姿が見られなかった広川町だけど…他にも国登録有形文化財の古民家が残り(見学は外観のみ)、熊野街道の古い町並みが楽しめる。併せて立ち寄ってみて。

(2021年5月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

JR紀勢本線 湯浅駅より徒歩15分(*駅にレンタサイクルあり)

〒643-0071 和歌山県有田郡広川町広671 MAP

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