一条恵観山荘

Ichijo-Ekan-Sanso Garden, Kamakura, Kanagawa

首都圏で“桂離宮”の趣を味わいたかったら…後水尾天皇の弟・一条恵観が京都に築き、堀口捨己が鎌倉への移築を手がけた国重要文化財の茶室と、苔や新緑の美しい庭園。

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一条恵観山荘庭園について

【夏期休業あり】
「一条恵観山荘」(いちじょうえかんさんそう)はJR鎌倉駅から約2kmの浄明寺エリアにある国指定重要文化財の和風建築・庭園。江戸時代初期、後陽成天皇の皇子で摂政・関白を務めた一条昭良(一条恵観)が京都・西賀茂に造営した別邸の一部を昭和時代に移築したもので、そのプロジェクトは建築家・堀口捨己が担当。また昭和の東京を代表する造園家・岩城亘太郎の興した「岩城造園」により庭園が手掛けられました。

寺院と比べると休館日が多いので、営業日は公式サイトにてご確認ください。付近には“竹の寺”として知られる『報国寺』『浄妙寺』など有名なお寺もあるエリアですが、それらと比べるとまだ観光客が少ない?と感じる一条恵観山荘。
近年はアジサイの名所の一つとして人気が出始めているので、その様な時期に行くと混雑しているとはずだけれど、ピーク期を少し外せば人気のカフェ『かふぇ楊梅亭』も独占できちゃう鎌倉の穴場カフェに…!!

その歴史について。後陽成天皇の第九皇子で、幼年期に公家/摂関家の一条家に養子に入った一条恵観。ちなみにお兄さんに『修学院離宮』などを造営した後水尾天皇(上皇)が居ます。
やがて朝廷で摂政・関白を務めた恵観、寛永年間(1624年〜1644年)頃に京都の郊外の西賀茂に別邸(山荘)を造営しました。

以後、一条家の流れを汲む公家・華族:醍醐家の別荘として用いられますが、戦後の時点ではこの茅葺の茶屋のみが現存する状況だったそう。そして昭和時代中期、茶道宗偏流お家元の茶室として、1959年(昭和34年)に建築家・堀口捨己の監修の下で鎌倉に移築。しばらくは『茶道宗偏流家元茶道会館』として用いられましたが、2017年秋より『一条恵観山荘』の名で広く一般公開が開始されました。

園内にはいくつかの茶室/数寄屋建築がありますが、入園して序盤、茅葺の「御幸門」(京都の皇室の庭園『桂離宮』にもあります)の先に見える田舎屋風の建物こそが国重要文化財の『一条恵観山荘』。通常は外観のみの見学ですが、月に数日、予約制の内部公開があります。京都の宮廷庭園(先述の桂離宮や修学院離宮)は建物に上がっての見学はないので、「実際に入ることができる当時の皇室ゆかり建築」としてもレア!!!恵観自身が設計に関わったという意匠/デザインを楽しめます。

その庭園も移築とともに昭和時代に作庭されたものですが、一条恵観山荘まわりの露地庭・延段・枯流れは京都から庭石を移されて再現されたものなのだそう。恵観の茶の湯の師だったのは茶道宗和流の祖で大名茶人の一人でもある金森宗和(作庭家でもあります)。元の庭園も金森宗和にアドバイスを受けながら造営されたと伝わり“宗和好み”と評される一方で、先述の御幸門の足元の延段(石畳)も京都の銘石・真黒石を敷き詰めたもので“京風”の庭園の趣が感じられます。

園内は他に『江月庵』(恵観山荘の脇の編笠門の先の茶室)、『仁居棟』(茶室「時雨席」とカフェ「楊梅亭」などで構成。)という2棟の茶室/数寄屋建築があり、江月庵の周りには恵観山荘とは異なる茶庭、仁居棟の周りには滑川沿いの景観が楽しめる自然風の庭園の風景となっています。時雨席は円窓のリフレクションもきれい…!

これら全ての建築が、お茶会はもちろんのこと、講演会や和楽器の演奏会、美術展示などの貸室として利用することが可能(料金は張りますが、重要文化財の恵観山荘も!)。アジサイの見頃や紅葉期など混雑する時期以外でも美しい庭園で、より心休まるかと思うので、ぜひピーク時期以外にも訪れてみて。

(2018年5月、2024年5月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

JR横須賀線 鎌倉駅より2km強/徒歩30分弱(※駅周辺にレンタサイクルあり)
鎌倉駅より路線バス「浄明寺」バス停下車 徒歩2分

〒248-0003 神奈川県鎌倉市浄明寺5丁目1-10 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は2,000以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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