世界的人気の『足立美術館庭園』を作庭した現代の名造園家・中根金作が地元・静岡県磐田市に残した枯山水庭園。
瑞龍山宝珠寺“涅槃の庭”について
【要事前電話連絡】
「瑞龍山 宝珠寺」(ほうしゅじ)は静岡県・磐田駅の南西約2.5kmの場所にある臨済宗妙心寺派の寺院。羽柴秀吉(豊臣秀吉)が信長に仕える前に滞在したという言い伝えるもあるこのお寺、本堂前にある枯山水庭園“涅槃の庭”の作庭を昭和を代表する作庭家・中根金作が手掛けられています。無料で鑑賞できますが、要事前電話連絡。
アメリカの日本庭園専門誌の日本庭園ランキングで十数年連続1位を記録、世界的人気の高い島根県の『足立美術館庭園』。この庭園を作庭した世界的造園家・中根金作は現・磐田市(旧・天竜村)の出身。
…という事実、磐田市の公式ウェブサイトや観光ウェブサイトでは一切ふれられていないのですが、2019年の磐田歴史検定で初めて名前が載ったっぽい。京都では大人気なのに地元・磐田市では知られていない…そんなクリエイターの貴重な庭園。
お寺の創建も古く、南北朝時代の1350年(観応元年)。同じ臨済宗でも当初は鎌倉の円覚寺派でしたが、現在は京都の妙心寺派。中根さんは妙心寺内の塔頭寺院でも複数の庭園を手掛けておられるので(『退蔵院庭園“余香苑”』など)、地元だからというよりそのご縁でこの庭園を手掛けられたのかな。
かつては“妙心寺派遠州六ヶ寺”にも数えられる寺構えをほこっていたそうですが、江戸時代後期の1854年(嘉永7年)に起きた安政東海地震で消失。その後徐々に復興され現代へと至ります。
非公開ですが豊臣秀吉から賜った朱印状を所蔵。秀吉は織田信長に仕える以前、遠州曳馬または南区の頭陀寺城に拠点をおいた松下一族に仕えていた時期があり、それに伴って宝珠寺へ訪れたという言い伝えが残るそう。
そして中根金作の手掛けた枯山水庭園について。1981年(昭和56年)、氏が大阪芸術大学の教授だった時代に作庭されたもの。緩やかな築山に深山を表現した石組がもうけられ、そこから砂利で表現された大海へと川の水が流れ込んでゆく姿が表現されています。
また本堂向かって左手にある亀島にはソテツが植っていて、これは温暖な遠州地方ならではの姿。(同じ磐田市の、ヤマハスタジアムの近くにある伝小堀遠州作庭の『医王寺庭園』もソテツが特徴的な庭園)
これまでも何度か訪れていますが、2020年12月の帰省時に再訪。築山のツツジやサツキの刈り込みは晩春〜初夏に花を咲かせ、そして秋にはドウダンツツジが赤みがかり庭園を彩ります。
今回はこのお寺から南東へ1.5kmほどの場所にある『中根金作生誕地』にも立ち寄りました。磐田市と中根家、現在はもう縁はないのだろうけど−−ひとまず地元の方々に「これはとても貴重な庭園だ」と知ってほしいなあ、と思う。
また静岡県西部にある中根金作作庭の庭園で公開されているものとしては新居町の『新居図書館庭園』があります。併せてチェック!
(2015年7月、2016年10月、2018年5月、2020年12月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)