作庭家・齋藤忠一により手掛けられた、吉野川の借景が美しい石庭と自然石の岩組がかっこいい回遊式庭園。
本楽寺庭園について
「本楽寺」(ほんらくじ)は美馬市の吉野川をのぞむ高台に建つ寺院で、庭園の作庭は齋藤忠一さん。その借景の素晴らしい枯山水庭園は四国八十八景にも選定。
作庭家・斎藤忠一さんの庭園として掲載するのは初めてなのですが、重森三玲のお弟子さんなので共に手掛けられた庭園はこれまでも幾つも観ているのだと思う。日本庭園関連の本も色々出版されています。
徳島県指定名勝『多聞寺庭園』と同じく、2019年年始に初めてつるぎ・美馬の庭園を巡った時には訪れず、夏に再度つるぎ・美馬を訪れた際に初訪問。こちらは年始時点では知らず…こんな庭園あったのか…!と後か行かなかったことを大変後悔した庭園…(しかもすぐ近くの国道を自転車で走り抜けてただけに…)。次行く時は絶対行こうと思っていたのだけど、その機会は思ったより早く訪れました。
本楽寺は平安時代初めの828年に僧・恵運により創建、そして平安時代末の1131年に僧・有純が中興した古刹。吉野川からすぐ近くの高台という天然の要害と言える立地から戦国時代には砦としても利用されたそうですが、桃山時代に長宗我部氏に攻められ全焼。多くの古宝物が失われたそうですが、本尊の阿弥陀如来像は鎌倉〜室町期の作とされるものが残ります。
江戸時代には徳島藩主・蜂須賀氏の菩提所となり、藩祖・蜂須賀正勝の正室・大匠院殿や美馬脇町を治めた稲田家の霊位を祀るそう。幕末に再度火災に遭い、現在の伽藍は僧・有圭に再建された以降のもの。
なんと言っても吉野川と阿讃山脈を借景とした石庭が素晴らしい!『鶴亀ノ庭』と言うそうなので、表現されているのは蓬莱神仙思想的な世界観なのだけれど、その石組は背景の山の稜線を表現しているようにも感じる。
こういった大きな河川を見下ろすロケーションの庭園ってこれまであまり記憶にないな、と思ったのだけれど、実際『日本で唯一であろう川を借景とした石庭』とされています。『居初氏庭園』、『煙雲館庭園』とか海・湖を借景にした庭園も漏れなく好きだったのだけど、吉野川も画になる…。
石庭の写真は事前に見てたけど、境内にはもう一つ池泉回遊式庭園があるということは知らなかった。こちらも素晴らしくって…天然の山肌を活かした石組と天然石の石橋、そして滝。その岩質がかっこいいんですよねえ…その上で苔もきれいでこの時期は青い紅葉も映える。
その回遊式庭園の脇にある数寄屋造りの茶室『一二三庵』も岩盤の上に建つロケーションで、客殿からそこへ至る渡り廊下共々とてもかっこいい!
本堂も岩壁の上に懸造で建っていて境内全般的に阿波の岩肌との組合せがかっこいいお寺さん。護摩堂の方へ進むとその脇ではその山肌を削り中と思しきユンボが停まっていて――更に庭園が拡張されるのかなー。そうだとしたらまたいつか訪れねば!
(2019年8月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
JR徳島線 小島駅より徒歩約15分(お寺すぐそばに下記地図にはない歩道橋があるので、も少し短縮できるかも)
道の駅 貞光ゆうゆう館よりレンタサイクルで約5km
〒777-0001 徳島県美馬市穴吹町三島小島123 MAP