八勝館“御幸の間”Hasshokan “Miyuki-no-ma”, Nagoya, Aichi

これが現代の桂離宮だ。北大路魯山人も愛した、近代数寄屋建築家・堀口捨己の代表作の名建築と池泉回遊式庭園。

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名建築。八勝館“御幸の間”について

「八勝館」(はっしょうかん)は大正時代創業の名古屋を代表する料亭。その中の部屋の一つ“御幸の間”は建築家・堀口捨己の設計によるもので、完成翌年に日本建築学会賞を受賞、『DOCOMOMO Japan 日本の近代建築100選』の最初の20選に名を連ねた昭和を代表する和風建築です。

はい優勝!!!!!今年のベスト庭園はここ!!!!!

庭園というより建物が有名な場所であり、もちろん建築の素晴らしさによってだいぶ加点(?)されてるんだけど、建築も庭園の一部。庭屋一如。建築が有名な一方で庭園に言及する文章は本でもネットでもあまり見たことないけど、4,000坪の日本庭園あってこその名建築だと思います。前後半に分けて紹介。
(そして周囲にはそれなりにマンションも立ち並び、大きな駐車場が隣接しているけれど、それを目隠しする程の高さに紅葉を中心とした樹木が整えられていて。かなりその空間に没入することができた)

庭園研究家でもあった堀口捨己(日本庭園協会では理事も)。自分も知ったきっかけは建築家としてではなく、東京にある国登録名勝『菊池氏茶室庭園』(*個人邸・非公開)の作庭者としてだったし、調べていると論文とかも出てくる。
建築家としては東京『江戸東京たてもの園』に初期作品“小出邸”がありますが、吉田五十八村野藤吾と比べて現存している作品が少ない!そう言った意味でも八勝館は見たいな〜という思いが強い場所でした。

でも文化財でもない現役の高級料亭。価格は公式サイトで見ていただくとして…御幸の間に至ってはその上で10人以上集めなければいけないハードルの高さよ…(まあ現代であれば「高級料亭を見るオフ会」とかが出来るのかもしれないけど)。

で、ある時八勝館のウェブサイト眺めてたら…“堀口捨己設計『御幸の間』見学会”なるイベントが過去に開催されている…!
果たしてこの2020年は開催されるのか…と春前から待ち構えていて、無事開催が決まったのとほぼ同時に申込み。2名以上〜の申込とあったけど、最少催行人数達してる日ならば1人参加も可。

「えっ、その見学会なら安く見られるの?」…想像より一桁多いかもしれない…参加費12,000円です。けど正攻法で“御幸の間”にたどり着くよりは何重にもハードルが低い。12,000円は高いかもしれないけど、夏フェスの1日券だと思えば、まああるよね…(と思い込む)。
様子を見る限り同日参加された中ではたぶん一番若かったと思うし、建築のプロっぽい人やマダムと席を並べて1万円の松花堂弁当も堪能。…ってことは見学会は2,000円?この名建築にそれは安すぎる…。

尾張徳川家の祈願寺として繁栄した『八事山興正寺』の門前にある八勝館は明治時代に材木商・柴田孫助の別荘として建造されました。その後1925年(大正14年)に料理旅館として創業。昭和の中頃までは旅館としても営業されていたそうですが(伊勢湾台風が来た頃には旅館だったという話をお聞きした)、現在は料亭としてのみ営業されています。

■御幸の間(1〜8・14〜23枚目)
広い敷地の中に点在する部屋数は12。その中でも目玉の“御幸の間”は1950年(昭和25年)に名古屋で国体が開催された際に、昭和天皇皇后両陛下の御宿泊所として建造(増築)されたもの。
そのモチーフとなっているのは『桂離宮』。建築的な細かいところはよくわからないけど、座敷奥の三連の丸窓は『笑意軒』の意匠を模したもの。もちろんそんなオマージュだけではなく、天井に埋め込まれた照明や襖や欄間の模様はあくまで近代建築のそれ。

そして月見台〜そこから眺められる庭園。桂離宮の月見台と比べると広い軒ですが、庭園に向けてせり出したこの感じは『月波楼』を思わせるし、先に書いた“菊池氏庭園”の写真と比較してもこの池泉庭園も堀口捨巳の意向が汲まれていないとは思えないのだ。

これ程の、歴史にも残る建築ですが、文化財指定は受けていない。しかも「あらゆる文化財指定のオファーを断っている」とおっしゃっていて驚いた。
その理由が「来られるお客様のために改築する余地を残しておきたい」という。「“御幸の間”も防音や寒暖のことを考慮して、堀口先生のお弟子さん・早川正夫先生の監修の下、障子から現在のガラス戸へ変えた」等々、元の建物の哲学は維持した上で、少しずつ変化しているそうです。

…そしたらとりまそこに影響しない庭園で名勝指定受けません…?(コッソリ

■残月の間(10・11枚目)
御幸の間と隣接する(連なっている)この部屋も堀口捨己の作品であり、表千家の茶室「残月亭」の写しになっています。昭和皇后陛下の御寝所となった部屋。床の間に飾られていた掛け軸は昭和の電力王・松永安左エ門によるもの。魯山人と同じく松永耳庵も八勝館に見せられた一人でした。

あと最後の写真は北大路魯山人の作品。当時のご主人は魯山人との親交も深く作品も頻繁に購入していたそうで、八勝館には数多く魯山人作品が残っているそう。

同じく堀口捨己の手掛けた“桜の間”と庭園の写真は後編に続きます

(2020年8月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

名古屋市営地下鉄鶴舞線・名城線 八事駅より徒歩3分

〒466-0834 愛知県名古屋市昭和区広路町石坂29 MAP