城館のような長大な濠が圧巻の新潟県最古の豪農の館…300年以上の歴史を持つ江戸時代中期築の国指定重要文化財のお屋敷には、やっぱり苔の美しい庭園!
長谷川邸(旧長谷川家住宅)庭園について
【冬季は休館】
「長谷川邸」(はせがわてい)は新潟県内/北陸最古と言われる豪農の館。江戸時代中期に建築された主屋をはじめ、表門/新座敷/井籠蔵/帳蔵/新蔵の6棟と敷地が「旧長谷川家住宅」として国指定重要文化財。苔の美しい庭園があります。
2022年10月に初めて訪れました。新潟・越路地域を訪れたのは同じく国指定重要文化財の近代和風建築『松籟閣』と近代日本庭園『越路もみじ園』を訪れて以来。
長谷川家の歴史について。元は武家出身で、江戸時代初期に現在の塚野山の地に土着。以来土地開発や治水事業などを通じて山林地主としての地位を固め、代々当地の庄屋をつとめました。最盛期を迎えた幕末〜明治時代には近郊4か村の耕地や山林の7割を独占する豪農として名を馳せました。
小千谷と柏崎を結ぶ旧魚沼街道に面した重厚な茅葺屋根の長屋門が迎えてくれる長谷川邸。門も大きいけど、それよりも間口70メートル(奥行きは120メートル!)という長大な濠がめぐらされているのがまるで中世の城館で圧巻。
門を入ると同じく重厚な茅葺屋根の主屋が現れます…が、今回はちょうど屋根の茅葺の葺替え・修復中。写真を紹介する面では残念だけど、貴重な技術伝承の場。
1706年(宝永3年)の火災で類焼した後、1716年(享保元年)に再建されたと伝わるのが現在の主屋。新潟県内では県南では『旧目黒邸』、新潟市では『北方文化博物館』など“豪農の館”がいくつかありますが、その中でも最古と言われるのがこの旧長谷川邸。
もちろん古いだけじゃない!デカい。屋根の重厚さこそ『旧目黒邸』には劣るけど、土間の広さと屋根の高さ。
そして大庄屋らしく、要人を迎え入れるためのお座敷の上段の間〜二の間も書院建築としてめっちゃオシャレ。瀟洒。豪雪地帯らしく軒の深さもカッコいい。「新座敷」(新と言いながら江戸時代中〜後期の建築)の方も広縁が素敵な書院建築。
そして。数ある新潟の豪農の屋敷と同様にこの旧長谷川邸でも苔の美しい庭園を見ることができます。まず前庭も一面の苔むした姿。
上段の間のある主座敷の前に広がるのが主庭園。これがまた良い苔庭で…苔の中に飛び石が打たれ、奥の方には屋敷を囲む濠〜土塁をそのまま活かした築山が。頭上にはモミジが生い茂り、11月初旬頃にはきっと苔と紅葉の美しい組み合わせを見ることができるはず!なんとなく同じ魚沼街道の『旧西脇邸』と雰囲気が似てるかな…?
そして主屋と新座敷の間にもう一つ、池泉鑑賞式庭園があります。
旧魚沼街道・塚野山宿を代表するお屋敷だった長谷川家には多くの著名人が訪れました。主屋の奥にある収蔵品展示室では文豪・森鴎外、谷文晁・奥原晴湖といった江戸時代〜近代の画家、そして軍人・山本五十六など、長谷川家に伝わる文書/書画/美術品などが展示。
邸宅は昭和後期に旧越路町が譲り受け、現在は合併後の長岡市の施設として公開されています。中越地震も乗り越え現代へと伝わる300年前のお屋敷、ぜひ訪れてみて。
(2022年10月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)