広島のツツジの名所に作庭家・重森三玲が手掛けた池泉回遊式庭園と、戦災を免れた江戸時代の“林泉の庭”。
半べえ庭園“聚花山の庭”について
「半べえ」は広島市の東南部にある料亭/結婚式場。その庭園は昭和の名作庭家・重森三玲の作庭。庭園はお食事やカフェ利用で見学することができます。2021年春に4年半ぶりに訪れました。(以前は庭園入場料の設定があったけど、変わっていました)
古代に神功皇后が訪れたことから発する『邇保姫神社』。その麓に果樹園“金井農園”を営んでいた金井半(半兵衛)が“聚花山”と名付けた標高48mの丘陵の一面にツツジを植えたのがはじまり。現在池泉庭園や建物があるあたり一帯に植えられた日本各地の躑躅は約10万本。現在はその半分の約5万株が残り、晩春に花を咲かせ庭園を彩ります。
ツツジの名所として名を馳せた1936年(昭和11年)開園の「金井公園」からはじまり、戦後の1946年(昭和21年)に改名した「広島遊園地」時代にはプールも。
そして昭和後期~平成年代に現在料亭やブライダルの場として用いられている“名翠苑”“翠石苑”“六角苑”、そして庭園内の茶室“聴松庵”などが建築され現代へと至ります。
■聚花山の庭(1-16枚目)
重森三玲により“聚花山の庭”が作庭されたのは1970年(昭和45年)。聚花山を背後として中央に“龍門の滝”、池の中には亀島・蓬莱島・鶴島を配した池泉回遊式庭園。
池や島の護岸を青石の立石にした荒々しさから重森三玲らしさが感じられる一方で、『兼六園』が特に有名な“徽軫灯籠”があるのは重森庭園では珍しい。独特の世界観と、マニア好みではなく“この場所で新たな門出を迎える”方々にとっての分かりやすさも兼ね備えた庭園。そして氏が手掛けた“池泉回遊式庭園”としては比較的規模が大きい、貴重なもの。
あと庭園より後に完成した建物“翠石苑”の一角にある露地、これもまた“重森三玲らしさ”がある。元々茶室があったのか、それとも後述の重森完途さんが手掛けられたのか。
■林泉の庭(17-19枚目)
敷地南側、“名翠苑”の前に広がる庭園は更に歴史が深く、江戸時代中期に作庭された池泉回遊式庭園。庭園脇にある茶室“紅霞亭”も江戸時代後期の建築だそう。
明治時代の“金井農園”の以前には当地の庄屋だったのかな?とも思わせる庭園の規模で、重森庭園とはまた異なる魅力のある、落ち着いた和の庭園。
■水車の庭(20-23枚目)
上記2つの間にある“水車の庭”は重森三玲の長男・重森完途により“聚花山の庭”より後に手掛けられたもの。水車の風情も良いし、林泉の庭へと繋がる抽象的なカーブを描いた曲水~州浜もかっこいい。
なお初めて訪れた時には隣接する場所に“半べえ温泉”があり、その中には重森三玲のお弟子さんが作庭された庭園もあったのですが、温泉は2020年8月に閉店…一帯は更地になっていました…(前回は温泉も利用したので寂しい)。更地の脇に庭園の遺構だけ残されていた。この場所は今後はどう使われるのかな。
(2016年7月、2021年4月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
JR山陽新幹線 広島駅より約3km(広島市内にレンタサイクル「ぴーすくる」あり)
広島駅前より路線バス「邇保姫神社」バス停下車徒歩3分
〒734-0047 広島県広島市南区本浦町8-12 MAP