昭和の洋画家の大家・中村研一の作品を堪能できる美術館と国登録有形文化財の旧邸を活用した古民家カフェ。その庭園は“東京の名湧水57選”にも選定の雑木の庭。
はけの森美術館庭園について
「はけの森美術館」(はけのもりびじゅつかん)は東京都小金井市にある洋画家・中村研一の旧宅地に開かれている美術館。正式名称は「中村研一記念小金井市立はけの森美術館」。武蔵野の森の自然を残す「美術の森」には国登録有形文化財の『旧中村研一邸』と“東京の名湧水57選”選定の湧水を活かした庭園が残ります。
大正〜昭和時代に掛けて近代洋画壇の重鎮として活躍した中村研一。戦前は代々木初台町に住居・アトリエを構えていたものの戦災で焼失。戦後に小金井のこの地に移住し晩年までを過ごしました。
氏が亡くなられた後、1989年(平成元年)にその作品を広く後世に伝えるため夫人・中村富子さんにより『中村研一記念美術館』が開館。2000年代に小金井市に寄贈され、2006年に小金井市立の美術館へと生まれ変わりました。
美術館本館の背後に広がる、現在は「美術の森」と呼ばれているこの緑地は中村邸のお庭でした。近隣の『殿ヶ谷戸庭園』、『滄浪泉園』、そして三鷹〜調布の『実篤公園』、『井の頭公園』などと同じように武蔵野崖線の自然と湧水を活かしたお庭で、現在は住宅地である武蔵小金井の中では貴重な雑木林/竹林を残しています。
ピカピカにお手入れされた“庭園”ではないかもしれないけれど、氏の作品のモチーフにもなったお庭でもあり、昭和中期の山荘風な和風邸宅+雑木の庭園…といった場として貴重な空間。近年ではスタジオ・ジブリ映画『借りぐらしのアリエッティ』のラストシーンの舞台イメージにも。この森の湧水はやがて野川へと流れ込みます。
そしてその森の中に佇むのが、2019年に国登録有形文化財となった旧宅(主屋)と茶室「花侵庵」。1959年〜1960年(昭和34〜35年)に氏と建築家・佐藤秀三が相談しながら建てられたもので、同じく佐藤秀三が設計した世田谷区の『向井潤吉アトリエ館』と同じく、“山荘風”な建築。
武蔵野崖線の斜面の立地に対応するための煉瓦+コンクリの基礎、玄関は煉瓦造りとステンドグラス、屋内には洋風な暖炉…と、まだあまりこの様な“戦後の”モダンな和洋折衷な邸宅って一般公開には至ってないのかも、近代の和洋折衷の邸宅とは異なる意匠が楽しい。
茶室も待合が一体化し伝統的な茶室とは全く異なるデザイン性…!貴人口のある開放的な茶室は佐藤秀三の代表作の一つにも挙げられます。(尚、現在の姿は美術館開館時に曳家で移動を経たもの。お茶が趣味だった中村さん、主屋2階にも3畳の茶の間があるそう)
現在、主屋は美術館の喫茶棟『はけの森、コマグラ』として活用されており、武蔵野崖線を散策されている方々を中心に古民家カフェとしても人気。カフェ・建物がお目当てな方も施主の自然への想いの残る庭園も楽しんで。
(2019年4月、2024年5月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
JR中央線 武蔵小金井駅より徒歩15分
武蔵小金井駅よりコミュニティバス「はけの森美術館」バス停下車 徒歩1分
〒184-0012 東京都小金井市中町1丁目11-25 MAP