五島美術館

Goto Museum Garden, Setagaya-ku, Tokyo

東急電鉄/東急グループの礎を築いた“鉄道王”五島慶太の邸宅に作庭された回遊式庭園。国宝も見られる美術館は吉田五十八建築、国登録有形文化財の茶室も。

庭園フォトギャラリーGarden Photo Gallery

五島美術館について

「五島美術館」(ごとうびじゅつかん)は東京・世田谷区の上野毛にある私立美術館。現・東急電鉄の元会長・五島慶太の美術コレクションを中心に展示され、その中には多くの国宝・国重要文化財も。美術館本館の建築は昭和の有名建築家のひとり・吉田五十八。本館の奥には武蔵野台地の国分寺崖線の地形を活かした広大な回遊式庭園が広がり、その中に国登録有形文化財の茶室“冨士見亭”“古経楼”や古い石造美術が点在します。
2022年5月に数年ぶりに訪れたのでその際の写真を中心に紹介。

東急電鉄/東急グループの実質的な創業者であり、首都圏の多くの鉄道会社(小田急/京王/京急など)の経営に携わり“鉄道王”とも呼ばれた五島慶太。阪急グループ創業者・小林一三や東武の根津嘉一郎らと同じく美術コレクター・茶人であり“古経楼”という雅号を名乗りました。

半生をかけて収集したコレクションは『源氏物語絵巻』『紫式部日記絵巻』など国宝5件、国指定重要文化財を約50件含む約5,000点。そんな五島慶太翁のコレクションを広く公開するための場として1960年(昭和35年)に開館したのが五島美術館…なのですが、美術館開館を宿願とした五島慶太本人はその前年にこの世を去りました。
以来60年以上に渡って日本〜東アジアの古美術を中心とした企画展が行われており、毎年春に『源氏物語絵巻』が、秋に『紫式部日記絵巻』に特別公開されます。

本館の建築設計は近代数寄屋建築の巨匠・吉田五十八。氏の現存する作品の中では奈良の『大和文華館』と並ぶ大型建築で、そのデザインは前述の国宝2作品の舞台でもある貴族の時代の“寝殿造”の建築を昭和のコンクリート造建築に取り入れたもの。竣工の翌年には第二回建築業協会賞を受賞、2013年(平成15年)にはグッドデザイン賞も受賞!

この美術館本館を含む約6,000平方メートルの敷地は元々は五島慶太の邸宅地でした(なお、それ以前の近代には大臣を歴任した政治家・田健治郎の邸宅“万象閣”だった場所)。本館の先には国分寺崖線を活かした庭園が広がり、上段部は富士山を眺めるための“見晴台庭園”と名付けられています。
上段部の五島慶太邸に作られた茶室の名前も“富士見亭”。また更に時代をさかのぼって、田健次郎邸の時代に建築された茶室“古経楼”。いずれも通常非公開ですが、月に1回ほど公開日が設けられます(公式Twitterをチェック!)。

数カ所ある階段を下って下段部へと向かうと徐々に自然の風景に。小さな“菖蒲園”“ひょうたん池”“蓬莱池”があるものの東京に多くある大名庭園のような「ここ!」と言ったフォトスポット的な池はなく、樹木もかなり自然に近い形で旺盛に育っているのがこの庭園のスタイル。地域の開発が進む中でも自らの手の中に武蔵野の自然を遺したのが五島慶太流。

椿山やつつじが丘、世田谷区の名木に選ばれている枝垂れ桜などの四季の花々のほか、五島翁が各地から引き取った石仏が庭園各所に点在しています。庭園散策のみも可。美術ファンの方はぜひ庭園の石像品にも注目してみて。

(2017年11月、2022年5月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

東急大井町線 上野毛駅より徒歩5分
東急田園都市線 二子玉川駅より徒歩15分
目黒駅・千歳船橋駅・田園調布駅より路線バス「上野毛駅」バス停下車 徒歩3分

〒158-0093 東京都世田谷区上野毛3丁目9-25 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は2,000以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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