臥龍山荘

Garyu-Sanso Garden, Ozu, Ehime

巨匠・黒川紀章に“桂離宮に劣らない”と言わせた近代の名数寄屋建築と近代の空飛ぶ茶室。国指定重要文化財、2021年に庭園も国指定名勝に。

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臥龍山荘庭園について

「臥龍山荘」(がりゅうさんそう)は“伊予の小京都”城下町・大洲の大河“肱川”を眼前にのぞむ景勝地に明治時代に造営された山荘(別荘)。現代の巨匠・黒川紀章《桂離宮にも劣らない。借金してでも手に入れたい!》と言わしめた茶室・数寄屋建築・庭園は2016年に国の重要文化財に指定、2021年に庭園が国指定名勝になりました。

人呼んで“大洲の桂離宮”。2022年1月に6年半ぶりに訪れました!木々の緑は少ない時期だけど、その分肱川の眺めが堪能できた。

初めて訪れたのが2015年、キービジュアル(肱川の対岸から見て崖に建つ茅葺の懸造建築“不老庵”)がめちゃくちゃかっこいいし“臥龍山荘”って名前もかっこいい。ここはきっと良い所だ…と思ったら、主屋の“臥龍院”もめちゃくちゃかっこよくって。かっこいいしか言ってないな。でもほんとそうで…。

その時はまだ愛媛県指定有形文化財で、庭園も文化財ではなかったけど、露地の庭園の魅力がまだ良く分かってなかった頃だったけどここは感動した。個人的には初めて感動した茶庭と言っても差し支えない。ほんと空間として素晴らしいし、日本建築が好きな方はここを見る為に伊予大洲に旅行するべきレベルの名建築…。

その歴史について。肱川沿いの岩山“蓬莱山”とそれを見下ろす丘一帯は江戸時代以前から景勝地として知られ、歴代藩主の遊賞地でもありました。三代目大洲藩主・加藤泰恒が龍が臥す姿に見立てて“臥龍淵”と名付けたとされます。

明治時代の後半、大洲の隣町・新谷出身の豪商・河内寅次郎がこの地を購入。寅さん。河内は大洲藩が政策として生産に注力した“木蝋”の輸出で成功し財を成した貿易商で、商売の拠点は神戸に置いていましたが、老後の余生を送るための場としてこの山荘を計画。

住友財閥の御用達大工棟梁で、新居浜の『旧広瀬邸』や滋賀県の『住友活機園』も国の重要文化財になっている建築家・八木甚兵衛を相談役として迎え、同じく京都から迎えた草木國太郎、そして大洲藩作事方の家系を継ぐ中野虎雄といった名匠を中心に、1930年頃から構想10年以上、4年の工期をかけ、1907年(明治40年)頃に竣工。
建築だけでなく、京都の世界遺産『天龍寺』の旧雲龍図が有名な日本画家・鈴木松年も参画。

母屋の数寄屋造り建築“臥龍院”がこれまたかっこいい。『桂離宮』の“松琴亭”“笑意軒”、『修学院離宮』、京都御所内の『梨本宮御常御殿』などをモチーフにした重厚な茅葺屋根の外観に、書院“壱是の間”、“清吹の間”、“霞月の間”からなる内部は職人の技が研ぎ澄まされた様々な意匠が。中でも“清吹の間”の欄間の透かし彫が美しく、そして神棚も「こんな神棚見たことない!」ってデザイン。壱是の間、霞月の間とその縁側からの肱川の眺めも美しく、一枚の自然石での沓脱石もかっこいい。

そして苔むした庭園へ。自然石だけでなく時に石薄、時に伽藍石、時に直線的な延段…と変化をつけた園路もどことなく桂離宮からの影響を感じさせる。明治時代はまだ見られた人も限られただろうに、八木甚兵衛はそれがかなう立場にあったのかな。

三代目藩主・加藤泰恒の時代に藤堂高虎の重臣でもあった渡辺勘兵衛による?吉野の桜、龍田の楓を移植した庭園が前身としてあったそうで、現在でも紅葉が多く見られる庭園になってます。庭園の途中には昭和年代に浴室→茶室へと改装した“知止庵”も。扁額は十代目藩主・加藤泰済の筆。

庭園の最奥にあるのが近代の空飛ぶ茶室“不老庵”。肱川に迫り出しているかのように体感できるこの庵は船に見立てて建築されており、天井も船底をイメージした網代編み。臥龍淵を眼下にのぞみ、対岸には“冨士山”の風景をのぞむ。時には山の向こう側から月が昇る様を眺められる、贅沢な・そして計算され尽くした名席…。

あとこの数寄屋建築・露地庭園だけじゃなくて、この場所を支える城郭のような石積がまたかっこいいんですよねぇ。蓬莱山からの不老庵の姿、そして対岸からの姿もぜひ見て欲しい。色々説明したけど臥龍山荘は本当にかっこいい。ナポリを見てから死ね、いや臥龍山荘を見ずに庭園や建築を語るのはもったいない!建築学生さんとかが夏休みに見に行く場とかになったらいいなぁ…。

(2015年6月、2022年1月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

JR予讃線 伊予大洲駅より徒歩25分弱(*駅前にレンタサイクルあり)
伊予大洲駅より路線バス「大洲本町」バス停下車 徒歩7分

〒795-0012 愛媛県大洲市大洲411-2 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は2,000以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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