京都・天龍寺庭園とも類似性を指摘される、枯滝石組の美しい四国最古の庭園。徳島県指定名勝。
願勝寺庭園について
「願勝寺」(がんしょうじ)は徳島県美馬市の寺町にある奈良〜平安時代からの歴史を持つ古刹で、鎌倉時代〜南北朝時代に作庭された庭園が四国最古の庭園と言われ徳島県指定名勝となっています。
平安時代後期、「平氏」が台頭するきっかけとなった「保元の乱」「平治の乱」に深く関わっていた信西(藤原信西)。その娘であり、崇徳天皇に仕えていた阿波内侍が、先の乱で敗れ四国に逃れていった崇徳上皇の菩提を弔うために京都に「願勝寺」を建立。
その後、阿波内侍の母の出身地である阿波の「維摩寺」(奈良時代創建)に移したのが、現在までこの地で続く願勝寺。室町時代には細川家・三好家の祈願所、江戸時代には徳島藩主・蜂須賀家に庇護され現在に至ります。
昭和年代に発見され重森三玲により全国に紹介されたという県名勝の「願勝寺庭園」は本堂の奥にあり、池泉鑑賞式庭園風ですが現在は枯池式の庭園(パンフレットでは枯山水庭園とある)。鎌倉時代または南北朝時代に作庭されたという庭園の見所はなんと言ってもその枯滝石組。地元・阿波の青石による迫力だけでなく、その石組は京都・天龍寺庭園との類似性を指摘されています。
パンフレットに書かれている訳ではないけど…高知の「竹林寺庭園」は天龍寺庭園を作庭した夢窓疎石による作庭と言われていて、疎石の手掛けた庭園の中では唐突に一つだけ四国の奥の方に存在する。パンフレットでは夢窓国師ではなく蘭渓道隆の名前が挙げられているけど――彼らとの関連性があるとしたら「こんな場所にあるなんて!」と声に出したくなる庭園じゃないかと。
その築山の石組の先に三頭山?を眺める借景も良い(現代に置かれた?祠がなければより美しい眺望が見られそう…)。
庭園以外の見所として、願勝寺の山門「八脚門」は明治時代の建築で、その独特の意匠が評価され国登録有形文化財となっています。また本堂前の「臥鶴の松」も“阿波八景”の一つと称される程立派なものだったそうですが、平成年代に枯れてしまい現在のマツは二代目。樹齢は新しいかもしれないけどこれも立派なマツです。その他は県内最古の博物館「美馬郷土博物館」を併設。
なお庭園拝観は常時受付に人が居られる訳ではないようなので、念の為事前に電話で都合をお聞きするのが確実です。
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2019年1月、初めて徳島県美馬市の庭園を巡りました。
「願勝寺」をはじめとする「美馬の寺町」の最寄り駅はつるぎ市の貞光駅。超一級河川・吉野川を挟んでこの2つの自治体は隔てられていて、現在こそ大きな橋が架けられて行き来することが容易だけれど、かつては渡ることが容易じゃなかったから両自治体ともに「川に沿って」横に広がっているんだろうと思った。…なお「橋によって行き来することが容易」と書きましたが、チャリで渡るとその圧倒的な河川の大きさに結構ビビります(笑)
そしてこの美馬の寺町には願勝寺のみならず国文化財クラスの大きな寺院が複数建ち、更に国指定史跡「郡里廃寺跡」(奈良時代初期に建てられた徳島県最古の寺跡)などもあり――意外な場所にこんな大きな規模の寺町があることに驚きました。願勝寺以外にも庭園をもう一箇所掲載予定!
(2019年1月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
JR徳島線 貞光駅より徒歩30分(途中、道の駅に1台のみ貸自転車あり)
阿波池田方面高速バス「美馬」バス停下車 徒歩約15分
〒771-2105 徳島県美馬市美馬町願勝寺8 MAP