京都の庭と茶室の大家・中根金作と中村昌生が手掛けた数寄屋建築/庭園と、幕末・近代の面影残る庭園も。
福山市ぬまくま文化館(枝広邸)庭園について
「福山市ぬまくま文化館(枝広邸)」(ふくやましぬまくまぶんかかいかん・えだひろてい)は当地で江戸時代から続いた町医者・枝広家の旧邸。現在では地域のコミュニティ施設/文化施設として活用。
和室及び茶室は、数寄屋建築/茶室研究の第一人者・中村昌生の設計、庭園は『足立美術館』でも世界的に有名な中根金作の作庭。
知ったきっかけは確か中根金作の作庭実績から。福山市で中根庭園と言うと『神勝寺 禅と庭のミュージアム』ですが、他にもあったのか…!しかもこの沼隈支所のある地域、神勝寺⇒鞆の浦へバスで移動した時通過してたよな…。
その後、建築も中村昌生の作と知り「行かねば…!」と思っていた場所。2021年春に初めて訪れました。
江戸時代以前は港町『鞆の浦』から程近い農村として、近代~現代には常石造船を筆頭とした工業の町として発展した旧・沼隈町。
枝広家は沼隈で幕末から三代目まで続いた開業医でした。昭和の終わりにその邸宅が沼隈町に寄贈され、1987年(昭和63年)に開館。2005年に福山市への合併に伴い現在の施設名に改名。
和室(主屋)と茶室“梔子庵”、お座敷から眺める枯山水庭園は開館にあたって新築/作庭されたもの。
“梔子庵”(くちなしあん)の命名は滋賀県の『永源寺』管長・篠原大雄老師。中根金作・中村昌生両名が携わった『神勝寺』が臨済宗永源寺派の寺院(で、滋賀・永源寺から移築されたお堂がある)ので、神勝寺からの流れで枝広邸の依頼もあったんだろう。(そういう意味でもセットで訪れることをオススメしたい場所)
一方で。主庭園および茶室“清泉堂”は幕末~明治期に造営されたものが残ります。こちらが素晴らしい!
築山の上に鎮座する二畳のお茶室・清泉堂。敷地外から見ると月と星の透かし彫りがかわいい。そしてそこに至るまでの園路が…渓谷のような深い池が掘られ、渓谷の景勝地を表現したような石組で土留めされ、石橋を渡り岩穴(トンネル)をくぐって茶室へと至る。
あえて複雑に作庭された庭園と、二畳のシンプルな茶室のバランス――。近代の先人のセンス、世界観!現在見られるセメントのブロックやなんかは昭和末の開館の際に補強・補修されたものなのかなあと想像するけど。その庭園の範囲内以上に迫力を感じる庭園。繰り返しになるけど、『神勝寺』と併せて訪れるべき庭園。
※なお竹原市の『旧森川邸』に沼隈から移築された大座敷があるので。往時の沼隈には他にも立派な邸宅や日本庭園があったのだろうなあ。
(2021年5月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
JR山陽新幹線・福塩線 福山駅より路線バス「沼隈支所」「枝広邸入口」バス停下車 徒歩3分
JR山陽本線 松永駅から路線バス「沼隈支所」「枝広邸入口」バス停下車 徒歩3分
〒720-0313 広島県福山市沼隈町2323-2 MAP