猪苗代湖を眼下にのぞむ、皇室・高円宮家ゆかりの国指定重要文化財の近代和風建築。昭和天皇/上皇陛下/今上天皇も散策した回遊式庭園も。建築設計は木子幸三郎。
福島県迎賓館(旧高松宮翁島別邸)について
【冬季休館/建築内部の特別公開期間あり】
「福島県迎賓館」(ふくしまけんげいひんかん)は大正時代に皇室・高松宮宣仁親王により別荘『天鏡閣』の別館として建立された近代和風建築。『旧高松宮翁島別邸(福島県迎賓館)』として玄関棟・居間棟・台所棟の3棟が国指定重要文化財。
猪苗代湖を眼下に見る眺望の素晴らしい高台に建つ福島県迎賓館。冬季休館期間(11月中旬〜4月)を除き庭園は通年で見学可能ですが、春〜初秋(5〜11月初旬)にかけてほぼ毎月建築内部の特別公開プログラム(予約制)も開催されます。年度ごとの日程は公式サイトで。2023年夏に参加した特別公開の際の写真を紹介。
その歴史について。1908年(明治41年)、江戸時代から続く四親王家・有栖川宮家の10代目・有栖川宮威仁親王の別邸として、猪苗代湖畔の風光明媚な高台に別邸『天鏡閣』が建設。
しかしその5年後に威仁親王は薨去。天鏡閣を引き継いだ大正天皇の第3皇子・高松宮宣仁親王によって、御還暦前の有栖川宮威仁親王妃慰子殿下の避暑/保養の場として1922年(大正11年)に建てられた別館が現在の福島県迎賓館。距離として約500m程、自然豊かな林を抜けた先にあります。
煌びやかな洋館である天鏡閣に対して、平屋建て/書院造りの純和風建築のこの別館。加賀百万石・前田家の出である慰子殿下にちなんで江戸時代の上級武家の邸宅をそのモチーフとして、近代の実業家の邸宅のような派手さではなく質実剛健な、その中に精巧な意匠が散りばめられた近代和風建築。また銘木を多く用いられた木材、釘隠しや引き手の金具も一級品が用いられていたりとその素材にも贅が尽くされているそう。
建築の設計は宮内省の技師・木子幸三郎。この福島県迎賓館は皇族関係の邸宅の中でも珍しい「平屋建ての和風建築」でもありますが、同じく平屋建ての『沼津御用邸』の増改築にも関わっている人物(その他『日光田母沢御用邸』なども)。またその父は同じく皇室ゆかりの建築家・木子清敬。最も数寄屋風(茶室)の「竹の間」の意匠も本当に美しい…!
また皇室の邸宅では珍しい茅葺屋根の長屋門があるのもこの迎賓館の一つの特徴。こちらは高円宮家とも繋がりのあった、人間国宝・濱田庄司の栃木県益子町の邸宅から譲られ移築されたものなのだそう。合わせて『益子参考館(旧濱田庄司邸)』をご覧いただくと、確かに色んな長屋門が一帯に移築保存されています。
戦後の1952年(昭和27年)に高松宮宣仁親王より福島県に下賜され「福島県迎賓館」に。福島県の所有となった後も昭和天皇・皇后が複数回ご宿泊に用いられたのをはじめ、今上天皇、上皇陛下をはじめ多くの皇族が訪れています。
そんな皇族の人々が散策された庭園。ほぼ平面で築山も緩やか、海(湖)への眺望が重視されたお庭で、池泉などはなく建築との関係性も含め先述の『沼津御用邸』とよく似ている印象を受ける。常緑樹や広葉樹の自然林を活かした庭園で、特に春にはヤマザクラ、シャクナゲ、シャガ/ヒメシャガ、ツツジが花を咲かせ、青もみじと共にお庭を彩ります。
この由緒ある国指定重要文化財の建築が実は民間の作品展などでも利用が可能。詳しくは公式サイトのお申し込みページをご覧ください。
(2023年8月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
JR磐越西線 猪苗代駅より路線バス「長浜」バス停下車 徒歩10分
JR猪苗代駅より約8km(駅前観光案内所にレンタサイクルあり)
〒969-3285 福島県耶麻郡猪苗代町大字翁沢字畑田1072-4 MAP