19歳以下は美術鑑賞無料!国宝9点所蔵、“藤田財閥”藤田伝三郎の志を現代に受継ぐ美術館の2022年に生まれ変わった庭園。京都・中村清草園作庭。
藤田美術館庭園について
「藤田美術館」(ふじたびじゅつかん)は近代の大阪を代表する実業家で“藤田財閥”創始者・藤田伝三郎(藤田傳三郎)とその子・藤田平太郎、藤田徳次郎の美術コレクションを所蔵・展示する私設美術館。「曜変天目茶碗」など多くの国宝を所蔵されていることでも知られます。かつての藤田家本邸の跡地に建ち、『旧藤田邸庭園』(藤田邸跡公園)に隣接。
2017年から建て替えのために長期休館されていましたが、2022年4月にリニューアルオープン。今回のリニューアルに伴って藤田邸跡公園とシームレスに繋がる新たな庭園も作庭されました!庭園/ランドスケープの作庭は大成建設・山下剛史さん、西島知明さんと京都・太秦の中村清草園さん。(2020年に公園を訪れた時にはちょうど作庭の様子も。)
明治時代、廃仏毀釈による寺院の取り壊しや西洋文化を取り入れた文明開化によって多くの日本の美術品が海外への流出・または廃棄が進みました。それに危機感を覚えた藤田傳三郎とその子・平太郎、徳次郎により蒐集された“藤田コレクション”。合計約2,000点の中に国宝9点、国指定重要文化財約50点を含みます。
《一個人の私有物として秘蔵するにあらず、広く世に公開し、同好の友とよろこびを分かち、また、その道の研究者のための資料にせまほしく(資料として活用してほしい)》という藤田傳三郎の遺志を受け継ぎ1954年(昭和29年)に開館したのが藤田美術館。
元々この地にあった藤田家本邸は太平洋戦争で大部分が焼失。残された蔵が美術館の展示館として活用されたことで“蔵の美術館”と呼ばれたそう。
今回のリニューアルで外観やエントランスは“ホワイトキューブ”的なスタイリッシュでモダンな現代建築へと生まれ変わりましたが、展示館の入り口/出口には蔵の扉などの古材が再利用されています。
美術館の庭園について。以前は別のお庭があったようですが、庭園も今回リニューアル。美術館のエントランス側から見て、中央部分に茶室“光雪庵”と露地庭が、奥に高野山の宿坊『光台院』から大正時代に藤田邸には移築された江戸時代前期の多宝塔を主役にした枯流れの枯山水庭園があります。多宝塔は2022年に大阪市指定有形文化財に!
藤田美術館の庭園で特徴的なところ…というより今回のリニューアルでおそらく最も大きかったポイントは《藤田邸跡公園との間にあった塀が取っ払われ、空間として繋がったこと》。
藤田美術館と藤田邸跡公園、かつては同じ藤田本邸があった場所ですが、公園は現在大阪市の都市公園なので所有者・管理者が異なる。その中で「空間を繋げた」ことは(視覚的にはもちろんだけど)歴史的な意味も大きい。ちなみに公園の方が少しグラウンドレベルが高いので、公園側から見て「美術館が身近になった」感じがするんですよね。
多宝塔も公園側からも見え易いように今回15メートルほど曳家で移動。そして多宝塔が目立つけど、枯流れの始点にある巨石、これは奈良の世界遺産『東大寺』にかつて東大寺にそびえた七重の塔の基礎(礎石)だったと伝わる逸品!
東大寺の礎石と伝わる巨石は隣接する旧『太閤園』や奈良の国指定名勝『依水園』にもあった。
庭園の中央に建つのが茶室“光雪庵”。藤田伝三郎の号“香雪”にちなんで名付けられたこのお茶室はかつて藤田邸内に存在した40もの茶席のうちの一つ“会庵”を再構築したもの。リニューアル前にも同名の茶室がありましたが、露地庭と共に今回装いを新たに。この露地の中・周囲にもいかにも古そうな礎石が点在…。
最後に、とても印象的だったのがエントランス・ロビーと『あみじま茶屋』。500円でお茶とお団子をいただけるのですが、この茶屋だけを利用しに訪れている若者がとても多かった…!
日本の古美術や茶道具を中心とした美術館にここ2〜3年多く訪れているのですが、その系統の私設美術館は正直「他にあまり人が居ない」ことがとても多い。
やはりそこに課題感もあるそうで、新しくなった藤田美術館は「名前こそ“美術館”だけれど、街の中でふらっと立ち寄っていただける場所」としての想いもあるのだとか。茶屋だけの利用でもOK、なのだけどなんと19歳以下はギャラリーへの入館も無料!(要証明書)
ほんと、入り口はなんでも良い。藤田美術館〜藤田邸跡公園へと繋がる和のランドスケープにも興味を持ってもらえたら嬉しい!
(2022年12月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
JR東西線 大阪城北詰駅より徒歩3分
JR各線・京阪本線 京橋駅より徒歩10分
最寄りバス停は「片町」バス停下車 徒歩3分
〒534-0026 大阪府大阪市都島区網島町10-32 MAP