小川家北白川別邸

Former Ogawa's Kitashirakawa Residence Garden, Kyoto

現在は紹介予約制のアートギャラリー。建築を藤井厚二、庭園を七代目小川治兵衛が手掛けた近代数寄屋建築の邸宅。国登録有形文化財。(非公開)

庭園フォトギャラリーGarden Photo Gallery

小川家北白川別邸について

【非公開】
「小川家北白川別邸」(おがわけきたしらかわべってい)は建築を『聴竹居』で知られる藤井厚二が設計、庭園は近代京都を代表する作庭家・七代目小川治兵衛植治)が作庭を手掛けた近代和風邸宅。「小川家北白川別邸」として主屋・表門が国登録有形文化財、京都市の“京都を彩る建物や庭園”にも選定。

知ったきっかけはCasaBRUTUSの『杉本博司が案内する おさらい日本の名建築』号。近くにこんな邸宅があったなんて! (左京区民)
基本的には“紹介予約制”のギャラリーなので一般には非公開。でもいつか見られる機会はないだろうかとそれ以来こまめに公式HPとInstagramをチェックしていて…。2021年6月の6日間だけ、一般の人も入場可能なアートフェアが開催。初日に伺いました。

知っているアーティストの作品も展示されていて、素敵だなあと思った作品を購入させていただいたけれど、ここでは邸宅・庭園について紹介します。

建てられたのは1934年(昭和9年)。施主・小川むらの夫は百三十銀行副頭取、阪神電鉄の取締役をつとめた実業家・小川為次郎で、長男・小川睦之輔は京都大学(京都帝大)医学部で教授をつとめた解剖学者。
先に京都に住んでいたのは睦之輔で、鹿ヶ谷の『住友有芳園』に隣接する地に同じく国登録有形文化財の『小川家住宅主屋』があります(非公開)。

為次郎の死後、一人で生活する隠居所として建てられたのがこの家屋。藤井厚二、大工棟梁に北村傳兵衛、そして小川治兵衛という一流の名匠を集結させたのも施主の小川ムラ自身で、また設計や材料選び・施工まで自ら指示をされたのだとか。
玄関へ入ってすぐの和と洋が溶け込んだモダンな応接間(サンルーム)は聴竹居の応接間にもよく似ているし(家具は同じ京都の宮崎家具)、最奥にある二畳の“閑室”は聴竹居の茶室(*2021年春時点では修復中)に似ているそう。縁側の網代天井など居間は数寄屋空間が強く出ていて――つまりこの近代数寄屋建築is最高。

そして主屋をL字側に囲う、苔の美しい庭園。こちらは小川治兵衛らしさより施主の好みが強く出ているのかなと思った。飛び石や延段には植治の庭ではあまり見たことがないようなデザインが少し入っていたり。主屋前の苔の中にある黒い岩が表現するのは舟石か牛か。
藤井厚二と小川治兵衛が一緒の場を手掛けている場を訪れるのは初めてだったのですが、施主・藤井・植治の三者がどのような関係でどのように意向が反映されていったのか、気になるなあ。

今回、縁側や主屋に展示されていたのは現代陶芸家・星野暁さん、竹内紘三さんなどの作品。普段のギャラリー空間や、芸術祭で用いられる“古民家”…ともまた異なる、近代の邸宅で見るのはすごく良かった。作品が生活の中に入った時のイメージがより膨らみやすい、ということなのかもしれない。また是非ぜひ訪れたいです。

(2021年6月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

京阪鴨東線・叡山電車 出町柳駅より徒歩20分
最寄りバス停は「北白川」バス停 下車徒歩5分
叡山電車 元田中駅より徒歩15分

〒606-8264 京都市左京区北白川小倉町50-10 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は2,000以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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