東京・銀座は木挽町に佇むうなぎの老舗に残る、大正時代の和風建築と京都の世界遺産“銀閣寺”の御用達庭師・田中泰阿弥が作庭?の庭園。
竹葉亭本店庭園について
【お食事の方向け】
「竹葉亭」(ちくようてい)は江戸時代末期に創業の老舗のうなぎ料理店。近代には陶芸家/美食家の北大路魯山人や阪急グループ創業者で茶人:小林一三(逸翁)、陶芸家:バーナード・リーチなど文人墨客や財界人に愛され、東京の本家のほかに関西・名古屋に数店舗を構える『東京竹葉亭』『大阪竹葉亭』に暖簾分けされた店舗があります。
その本店(竹葉亭本店)は東京・東銀座(木挽町)の老舗料亭や近年は高層ビルが立ち並ぶエリアに存在し、お店の一部は関東大震災の直後の1924年〜1925年(大正13年〜大正14年)に再建した近代の和風建築を残します。その傍にある露地風の庭園を紹介。
数年前に一時期だけ東銀座に勤務していた時期があり、このエリアの老舗の店舗は色々気になっていた。と言っても普通未満のサラリーマンなので『東京吉兆』とかは目ん玉飛び出るような…選択肢が入るレベルのお店ではなく、もっぱら「ゆで太郎」だったけれど…。
で、この竹葉亭はランチのうな丼が3,000円弱。静岡産のうなぎがこの価格ならば――と思いつつ結局当時は足を運ばなかったのだけれど、2022年1月に数年越しに初めて訪れました。
少しだけ竹葉亭の歴史について。幕末の嘉永年間に現在の新富町で創業。明治時代以降、二代目別府金七が『新富座』、『歌舞伎座』、『帝国劇場』の弁当の仕出しなどで販路を拡大。大正〜昭和にかけて各地に店舗数を増やし、冒頭の方々以外にも夏目漱石、林芙美子、高浜虚子の作中にも登場、画家・岸田劉生、歌人・斎藤茂吉も訪れていたそう。
当初新富町にあった本店は関東大震災で倒壊。東京・銀座(木挽町)に移転したのはその直後で、道路に面した店舗棟は現代(といっても昭和?)に建て直しをしたものですが、その奥にある数寄屋建築(離れ・茶室)は東京大空襲/戦災を逃れた貴重な近代の建築。
さて、今回数年越しで訪れた目的は“庭園”。店舗棟と個室の間に茶庭があります。お食事の後にご案内いただきました。
元々店舗の写真を見てて「露地庭がありそうだな」位には思っていたのですが、京都の世界遺産『銀閣寺』の御用達庭師だった田中泰阿弥の作庭歴の中に東京・銀座の『竹葉亭庭園』があることに気づいて…その年代が1953年(昭和28年)なので現在の店舗棟の竣工もその年代?
1953年は田中泰阿弥のキャリアの中でいえば地元・新潟の国指定名勝『清水園』の修復がはじまった年。竹葉亭の園路(延段)から類似性を感じられるような気もする…?後年に作り直されてる可能性もゼロじゃないけど近代〜昭和半ばって感じで現代的な感じはしない。銀座にこんな空間が残されていたんだねぇ…。
…しかし決して安心できるものではないなぁと思ったのが、木挽町を数年ぶりに訪れたら『東京吉兆』が解体されていた。先にも書いた通り“現実的に行けるお店ではなかった”けれど、昭和の巨匠のひとり・吉田五十八の建築がさして話題にもならず消失しているのはつらい(庭園も昭和東京の代表的な作庭家・岩城亘太郎だった)。
もっとも、現代はどの職業でも「接待費・交際費」の扱いが難しくなっていると思うのでそういう影響もあるんだろうけどね…。
この竹葉亭本店は少しでも長く残されて欲しいなぁと思うし、今回紹介して知った方が一人でも「もうすぐ土用の丑の日だし行ってみよか」となってくれたらいいなとも思う。ちなみに当サイトで過去に紹介した中では兵庫・西宮の『白鷹禄水苑』内に『東京竹葉亭』を併設しています。まあうなぎは一年中美味しいので気になった方はぜひどうぞ!(…静岡県で食べる静岡産のうなぎはもっと美味しいけどね!)
(2022年1月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
東京メトロ日比谷線・都営浅草線 東銀座駅より徒歩6分
東京メトロ銀座線・丸の内線 銀座駅より徒歩8分
JR山手線・東京メトロ銀座線・都営浅草線 新橋駅より徒歩10分
都営大江戸線 汐留駅より徒歩10分
〒104-0061 東京都中央区銀座8丁目14-7 MAP