洋画家・中村不折の収集した歴史的人物たちの書と戦前の建築、枯山水庭園が楽しめる博物館。東京都指定史跡。
台東区立書道博物館・中村不折旧宅について
「台東区立書道博物館」(しょどうはくぶつかん)は、明治~昭和期の書家、洋画家・中村不折が個人でコレクションした日本・中国の古い書物を展示する博物館。書道といってもいわゆる“書初め”みたいなやつではなく、御経や巻物、掛け軸のような古書・拓本・青銅器・石造物などなど展示物は多岐に渡ります。
昭和11年に開館したこの博物館は太平洋戦争の空襲を免れ、「中村不折旧宅」として東京都指定史跡となっています。2019年5月に初めて訪れました!
中村不折は元は明治時代にフランスに留学してジャン・ポール=ローランスの教えを受けるなど、洋画家として世に名が出た人物。その中で夏目漱石や森鴎外の作品の挿絵を描くなど文人とも親交があり、中でも正岡子規とは日清戦争の従軍記者として共に中国へ赴いたり、不折の壮行会を正岡子規旧宅で開催したりと仲良しだったみたい。
この書道美術館のすぐ近隣にその正岡子規旧宅『子規庵』があります。そちらにも書いたけど、今は鶯谷=歓楽街というイメージですが、近代までの鶯谷~日暮里の“根岸”界隈は文人墨客も数多く住んだ閑静な場所だったそう。
この書道博物館を開いたのは65歳を過ぎた晩年のこと。現在は台東区立ですが当初は中村不折による私設美術館でした(1995年に台東区に寄贈)。
中村不折のコレクション数はなんと16,000点!その中には国指定重要文化財級のものも含まれ、著者の名前を並べるだけでも豪華。空海、最澄、菅原道真、紀貫之、武田信玄、織田信長、伊達政宗、伊藤若冲、そしておにわさん的にも名前が割と挙がる小堀遠州、本阿弥光悦、徳川光圀、頼山陽も。
そして同時代を生きた森鴎外や正岡子規、徳富蘇峰の書もあれば、決して日本史的に重要なものに偏ってるわけでもなく、中国の各時代の石造物や青銅器も所蔵・展示している。
年代も作風もバラバラ。共通するのは…『どれもすごく面白い』こと。それは“書道のプロ”ではなく元が『芸術家』だったからこそ、この人が“良い”と思ったものが集められている。地味だけど世界的にも随一のコレクションらしいし、歴史好き・石造物好き、色んな人が行っても楽しめると思います!
中庭として自然風も取り入れられた枯山水庭園があります。隣接する(受付のある)「中村不折記念館」の完成が1999年なのでもしかしたらその時に手が入っている可能性もあり、お庭には近年移築された(元々中村不折宅にあった)明治時代の蔵も。書とともに楽しんで。
(2019年5月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)