イタリアを拠点に活動する世界的彫刻家・安田侃の彫刻作品が新たな息吹をもたらす、北の大地の開放的なランドスケープと廃校が舞台の野外彫刻美術館。
安田侃彫刻美術館 アルテピアッツァ美唄について
「安田侃彫刻美術館 アルテピアッツァ美唄」(やすだかんちょうこくびじゅつかん・あるてぴあっつぁびばい)は世界的な彫刻家・安田侃の出身地、北海道美唄市に開かれた野外彫刻美術館。以前は「アルテピアッツァ美唄」が施設名でしたが、2016年に登録博物館(美術館)になった事に伴って現在は「安田侃彫刻美術館 アルテピアッツァ美唄」が正式名称。
都内でも東京ミッドタウン「妙夢」「意心帰」や東京国際フォーラム「意心帰」、『東京都庭園美術館』の庭園にある「風」、北海道ではJR札幌駅コンコースの「妙夢」など、イタリア・フィレンツェ郊外を拠点に大理石やブロンズの彫刻作品を世界に届けている彫刻家・安田侃さん。
“日本庭園”ではありませんが、北海道ではイサム・ノグチの『モエレ沼公園』と並んでクリエイティヴィティあふれる庭園/ランドスケープ…だと思っているので紹介。
かつては三菱財閥、三井財閥も進出する程に炭鉱で栄えた町・美唄。現・JR美唄駅から三菱の鉱山まで「三菱美唄鉄道」が走り、駅からアルテピアッツァ美唄へ向かう道中には美唄鉄道・東明駅の旧駅舎が残されています。
しかし戦後に石炭/炭鉱の衰退が始まると昭和時代中期には三菱や三井の炭鉱も閉山。アルテピアッツァ美唄が開かれたこの場所は人口減少に伴って廃校となった小学校(美唄市立栄小学校)の跡地。
そんな美唄で生まれ育ち、海外で創作活動を始めていた安田侃さんが国内でアトリエを探す過程でこの廃校に出会い、作品収蔵庫としての利用を経て、1992年(平成4年)7月に「アルテピアッツァ美唄」としてオープン。「アルテピアッツァ」とはイタリア語で「芸術広場」を意味するそう。
赤い屋根の木造校舎は現在は作品ギャラリーやミュージアムショップとして、かまぼこ屋根の旧体育館はアートスペースとして活用。地域の子どもに人気の「水の広場」や、喫茶スペース「カフェアルテ」や体験工房も後年に開設され、当初は5作品だった野外展示作品も、2024年現在は7万平方メートルの中に約40作品が設置されています。
また、そのロケーションも魅力の一つ。360度を山に囲まれた空間は、春~夏の緑あふれる空間も最高に開放的だけど、秋には360度に紅葉を味わえるそう。
安田侃さんは初めて美唄に制作した作品『炭山の碑』が設置された景色にも“借景”という言葉を用いられており、このアルテピアッツァも芝生の中の作品だけでなく、築山の中に置かれた作品(『天翔の丘』)、林の中の作品、笹の中の作品…とアートとランドスケープの一体感が最大の魅力であり楽しい所。
また毎年アートホールや屋外の空間でのコンサートや各種展覧会も開催。目的を持って訪れてもきっと良いけれど――目的なく、ただただその空間を眺めながらも長い時間を過ごしたい場所でもある。訪れた際には過疎化や廃校という運命を辿った町の記憶に思いを馳せながら作品を眺めてみて。
(2014年11月、2024年5月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
JR函館本線 美唄駅より約5km(駅前のホテルにレンタサイクルあり)
JR美唄駅より路線バス「アルテピアッツァ美唄」下車すぐ(時刻表は施設公式サイトを参照)
〒072-0831 北海道美唄市落合町栄町 MAP