実は日本屈指の“国文化財庭園”の集積地・津軽/弘前…この地域独自の造園流派の庭師・三代に渡り作庭された“大石武学流庭園”の代表的な庭園の一つ。国指定名勝。
瑞楽園(旧対馬氏庭園)について
【冬季休業】
「瑞楽園」(ずいらくえん)は青森県弘前市の郊外、“津軽富士”岩木山の麓の「宮舘」地区にある国指定文化財(国指定名勝)の庭園。津軽/弘前地方に伝わる庭園流派「大石武学流庭園」の代表的な庭園と言われます。
レトロな洋館や巨匠・前川國男の作品など“弘前建築遺産”が近年盛り上がる弘前。建築と切っても切れないものと言えば“庭”。弘前には国指定文化財/国登録文化財の庭園が計7箇所もある“歴史的庭園が全国的に見て多い街”でもあります!(京都市・東京23区は別格としても、大津市に次ぎ奈良市などに並ぶ規模)
その中で最も早く国指定文化財となった庭園が瑞楽園。
「大石武学流」について。津軽藩・弘前城下を中心に江戸時代後期〜明治・大正時代に広まった独自の作庭のスタイル。その祖として名前が上がるのは京都から弘前藩に招かれた茶人・野本道玄とも言われ、この野本道玄は弘前市内には『貞昌寺庭園』(青森県指定名勝)を残します。(※その他、京都から流された公家・花山院忠長が伝えた説も)
そんな「大石武学流」を受け継いだ三代目・高橋亭山が着手し、四代目・小幡亭樹、そして五代目・池田亭月が3代に渡り、1890年(明治23年)〜1905年(明治38年)の約15年の歳月を掛けて作庭〜1936年・昭和11年に改修されたのがこの「瑞楽園」で、平川市の『盛美園』、黒石市の『金平成園』と共に大石武学流庭園の代表作の一つ。(作庭された年代や3代に渡って作庭されたのは金平成園と近い。)
弘前駅から約10km、弘前城から約7〜8km離れた宮舘地区。現代にはアクセスが良い場所ではないものの、集落の周囲には一面にりんご畑が広がり、立派なお屋敷が多かったりする。
その中でも大きな茅葺屋根で歴史的な雰囲気を醸すのが、瑞楽園に付属する「旧對馬家母屋」。対馬氏は江戸時代までは当地の大庄屋をつとめていた豪農で、名前の通り津軽へ移住する以前(中世以前)は九州・対馬にルーツがあったとか(宮舘地区には他にも対馬家があります)。現在は弘前市所有で、地元の三浦造園が指定管理者となって公開・維持管理されています。
書院に面し、お座敷から眺める座敷鑑賞式(座観式)の枯山水庭園。その特徴は、全体的には平坦。手前の平庭には飛び石と、大石武学流庭園には必ず見られる平たく置かれた大きな石“礼拝石”(らいはいせき)。その先(奥)に枯池(場合により池泉)が置かれ、その枯池の周りには自然石による石灯籠(化燈籠)と二つの巨石…岩木山を表すとも言われる「遠山石」と「深山石」が置かれる。
これらのデザインはまさに大石武学流のセオリーと言えるデザインの分かりやすい例である一方で、中央にそびえる「頭位松」や、右手奥に見え隠れする石鳥居は瑞楽園ならではのアイキャッチとなっています。
また建物の外にはシャレた円窓のある四阿(あずまや)があり、その四阿のある上手側に立つと岩木山が大きく現れてど迫力!
他の大石武学流庭園の代表的な庭園…『盛美園』、『金平成園』と違って「公共交通機関での行きづらさ」が少しネックですが、体力に自身のある方は弘前市内のレンタサイクル(電動アシストもある)で向かうと、徐々に大きくなる岩木山や、のどかなりんご畑の景観などなどに癒されます。ぜひ市内から足を伸ばしてみて。
(2016年11月、2018年7月、2023年9月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
JR奥羽本線 弘前駅より10km ※弘前駅にレンタサイクルあり(約50〜60分)
JR弘前駅より路線バス「岩木庁舎前」バス停経由→「折笠」バス停下車 徒歩10分
JR弘前駅より路線バス「高杉」バス停下車 徒歩30分
※バスはいずれも本数僅少なので、事前に時刻表確認の上で組み合わせて。
〒036-8384 青森県弘前市宮舘宮舘沢26-2 MAP