蓮如上人ゆかりの寺院に残る、お寺にはレアな近代の洋館からものぞむ“御殿庭園”。国登録有形文化財。
御堂 陽願寺庭園について
【冬季休業/土日祝のみ】
「出雲山 御堂 陽願寺」(みどう ようがんじ)は越前市・武生の中心部にある浄土真宗本願寺派の寺院。その命名は浄土真宗中興の祖・蓮如。江戸時代~近代に建立された本堂、庫裏、対面所、御殿、洋館、客殿、土蔵、鐘楼、納骨堂(蓮如堂)の9棟が国登録有形文化財で、江戸時代末期作庭の庭園が残ります。
2021年6月に約2年ぶりに武生を訪れました。2年前に訪れた時は存在を知らなかったこの庭園、元のきっかけはお寺さんから「庭園をご紹介いただけませんか」とご連絡いただいたこと。この時。⇒Twitterの投稿
それ以来武生へ行く機会をずっと伺ってたのですが…北陸(金沢方面)へ行くタイミングで立ち寄り。この日は丁度6月の“蓮如忌~Rennyo Festival”の日でした。
創建は室町時代の1484年(文明16年)。開基・善鎮上人は元々『毫摂寺』(国指定名勝『城福寺庭園』の近くにある大寺院)の住職でしたが、大谷本願寺を破却し京都を追われ越前を拠点とした本願寺八代目・蓮如上人に教えを受け、新たに陽願寺を建立。そんな蓮如ゆかりの寺院であり、蓮如上人の御真筆も残ります。
戦国時代、越前一向一揆が織田信長により鎮圧された後に当時の武生のお城・府中城に入った青木紀伊守により現在の場所が寄進され移転。
江戸時代には本願寺より院家(門跡寺院の別院)に任じられて発展。皇族ゆかりの寺院になったことで“御堂”と呼ばれるようになり、桜町天皇の位牌、光格天皇の冠など皇室関係資料も所蔵(越前市指定文化財)。
幕末に大火で伽藍を焼失したため、現在残る建造物はそれ以降の幕末~近代に再建されたものが中心。それゆえ寺院には珍しい近代の洋館があることや、対面所、御殿の意匠に“近代和風建築”の要素が見られるのが陽願寺の楽しいところ。
本堂の脇にある“蓮如堂”もモロ近代建築で、昭和初期に当時の福井の建築設計界を牽引していた建築家・伊藤貞の設計(2021年で閉館した『福井市文化会館』を手掛けた方)。
それぞれ細かい解説は公式サイトの解説が詳しい。このような公式HPの充実やSNSの運営、宝物の調査や国登録有形文化財への答申は2020年の創建550年を記念し、そこへ向けて行われたもの。現代の寺子屋事業としてプログラミング教室なども。
庭園は大小いくつかありますが、主庭は幕末に建立された御殿から眺める“御殿庭園”。御殿は西本願寺の御門主を迎え入れるための空間で、その書院造り建築は京都『西本願寺』の国宝“白書院”を再現したもの。
庭園は斜面上部に建つ御殿から見下ろす、奥行きのある池泉回遊式庭園で(※拝観時は降りることはできません)、サツキ・ツツジの刈込や降り注ぐモミジの植栽が美しい。
そして寺院庭園なのに一角に洋館がある特異性!そのきっかけとなったのは陽願寺の十四世・藤枝澤通が明治初期にフランスに留学したこと。そこでの影響が考えられるそうですが、本人の“新しいものを取り入れよう”という意思がなければ造られるものではない。
その他、『東福寺』を思い出す市松の庭や、対面所の“竹の間”には苔むした坪庭が。対面所がまた西本願寺の国宝・対面所を再現したものである一方、そこに連なる“竹の間”がお茶室のような数寄屋空間で、坪庭を含め京町家のような空間なのが面白い。寺院らしさだけじゃなく、近代のさまざまな空間美が感じられるお寺さんです。
(2021年4月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
JR北陸本線 武生駅より徒歩10分強
福井鉄道福武線 越前武生駅より徒歩15分強
武生駅より路線バス「善光寺通り」「桜町」バス停下車 徒歩3分
〒915-0823 福井県越前市本町3-10 MAP