後嵯峨天皇も歌った高野山の別格本山寺院・宿坊に、重森三玲が作庭した十五石の枯山水庭園。国登録名勝。
桜池院庭園について
「櫻池院」(ようちいん)は高野山真言宗の別格本山の寺院であり、国宝の建造物もある「壇上伽藍」のすぐ向かいにある高野山の宿坊。重森三玲により作庭された枯山水庭園が国登録記念物(名勝地関係)となっています。
2019年夏に5年ぶりに高野山に訪れて、主に重森三玲により作庭された庭園を巡りました。再訪した『正智院庭園』の後に訪れたのがこの桜池院。その時の写真と2020年6月に更にまた訪れた時の写真を更新。
桜池院は平安時代の末期、1127年に白河天皇の第四皇子・覚法法親王により開かれた寺院。なお覚法法親王は京都『仁和寺』の第四世でもあります。覚法法親王は仁和寺では“高野御室”とも称されるそう。
当初は『養智院』という名前だったそうですが、鎌倉時代に後嵯峨天皇が高野山に訪れた際にこちらを訪れ、当時の庭園の池に桜が映る姿に感銘を受け、
“桜咲く 木の間もれ来る 月影に 心も澄める 庭の池水”
と歌ったことから『櫻池院』と名前を改めることに。なのでで“おうちいん”ではなくて“ようちいん”なのですね。公式サイトには“本堂は当時のものが残っている”と記載があるのですが、だとすると平安時代とだいぶ古い…でも文化財指定はされていないようなので詳細はわからず…気になる。
室町時代には足利氏と結びつきを持ち、また隣接している(現在は桜池院と一緒に管理されている)『成慶院』は戦国時代には甲斐国・武田家と結びつき、武田信玄公の菩提寺となっています。江戸時代には会津藩の保科・松平氏や周防国・大内氏らに庇護されたそう。
重森三玲さん作庭の石庭は山門をくぐってすぐの前庭としてあります。作られたのは昭和27年(1952年)。先の正智院庭園や『西南院庭園』の作庭・改修が行われたのもこの年。白砂と合計15石の島々が配されたシンプルな枯山水庭園という印象ですが、これは建造物から眺める奥の庭ではなく前庭だからそう表現されたのだとか。言われてみると…重森三玲さんの庭園の中で、太宰府『光明禅寺』や京都『光明院』もそういった表現の差がありますね。
公式サイトに載っている、庭園背後のシャクナゲの生垣の花が咲いた姿がまた美しいのですが、シャクナゲの生垣と枯山水庭園の組合せってあまり見たことない気がする…!シャクナゲは好きな花だからまた春に訪れたいなあ。
ちなみにテレビ朝日系列で以前放映されていた番組『ぶっちゃけ寺』において“泊まってほしい宿坊”で第2位として紹介されたそう。公式サイトでは池泉庭園の写真も見られるのですが、どうやらこれは宿坊の中にある庭園。次回は是非宿坊に泊まりたい!
(2019年8月、2020年6月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
高野山ケーブル 高野山駅より路線バス「金堂前」バス停下車すぐ
金剛峯寺より徒歩7分
高野山駅から上り坂を約3.5km
〒648-0211 和歌山県伊都郡高野町高野山293 MAP