
日本で唯一、重要文化財の本陣/脇本陣が現存する国重要伝統的建造物群保存地区・矢掛。明治時代の町家のリノベーションされたお庭“通りにわ”。
矢掛ビジターセンター問屋について
「矢掛ビジターセンター問屋」(やかげびじたーせんたーといや)は国選定の重要伝統的建造物群保存地区「矢掛町矢掛宿」の町並みにある町家・商家建築。現在は「やかげDMO」(一般財団法人矢掛町観光交流推進機構)による観光案内施設として活用。町家のお庭も鑑賞できます。
ローカル線の井原鉄道の駅から徒歩10分程、2020年に重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)に選定された岡山県・矢掛の古い町並み。現代には幹線から外れましたがかつては山陽道(西国街道)の宿場町として栄え、約1kmの区間に江戸時代~近代の古い町家/商家/そしてレトロな建築がズラリと並びます。ちなみに江戸時代初めにこの矢掛を含む備中国を治めたのは庭園でも有名な小堀遠州。遠州の書状にも矢掛は登場したとか。
そんな矢掛宿には大名や幕府役人など要人が宿泊所・休憩所とした本陣の『石井家住宅』と脇本陣『髙草家住宅』が江戸時代の姿のまま現存。いずれも国指定重要文化財で、『本陣と脇本陣が共に重要文化財クラスで現存』しているのは日本全国で見ても矢掛だけ!と言う貴重な場所。高草家は2023年にはNHKのドラマ『犬神家の一族』のロケ地にもなりました。
その高草家のすぐ並びにある町家が「矢掛ビジターセンター問屋」。矢掛やその周辺地域の各種観光パンフレットや重要伝統的建造物群保存地区としての歴史についての展示をチェックできる観光拠点。江戸時代には「因幡屋」という屋号で馬や人などの輸送手配を行っていた問屋だったそう。2階部分の虫籠窓が特徴的な現在の町家は明治時代に建てられたもので、2021年に活用の為にリノベーションされ内装は所々新しくなっています。
いわゆる“うなぎの寝床”と呼ばれるタイプの、奥行きのあるこの町家。休憩することもできるお座敷から町家のお庭(坪庭)が眺められます。建物と同じく2021年に生まれ変わったこのお庭、樹齢100年以上とされる既存の中央のクロマツを主木として、新たにもうけられた苔の小さな築山(島)の中に椿、イロハモミジを中心とした寄植えを植栽。砂利の中に飛び石が配され、観光施設・地域のコミュニティ施設として「利用しやすい庭」となっています。シンプルなお庭ですが、茶色っぽい砂利の感じなどは『犬養木堂記念館』のお庭を連想し、地域性を感じさせます。
興味深いのはこの中庭が「通りにわ」と呼ばれている(名付けられている)こと。表の重厚な虫籠窓もそうですが、同じ「うなぎの寝床」と言ってもやはり京都と同じばかりではなく、それぞれ地域性がある。矢掛観光の際にはぜひ立ち寄ってみて。
(2023年9月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
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