和中庵(旧藤井彦四郎邸)庭園Wachuan Garden, Kyoto

日本の繊維市場の礎を築いた実業家・藤井彦四郎が大文字の山裾に造営した、眺望と紅葉の美しい庭園と近代建築。

庭園ギャラリーGarden Photo Gallery

旧藤井彦四郎邸・和中庵庭園について

【通常非公開・秋に特別公開】
「和中庵」(わちゅうあん)は日本の化学繊維市場の礎を築いた実業家の一人と言われる近江商人・藤井彦四郎が大正時代~昭和初期に大文字山の山裾に建てた邸宅。
現在は学校法人ノートルダム女学院が所有。学校敷地内にあるため普段は非公開ですが、近年は秋に特別公開が行われています。京都で秋に特別公開される建築として認知はしていたので2019年の秋に初めて訪れたのですが、こんな紅葉の美しい庭園や見晴らしの良い和風建築があるとは知らなかった!

そしてまず触れたいのは藤井彦四郎。春に“近江商人の郷”五個荘金堂へ訪れた際に足を運んだ『近江商人屋敷 藤井彦四郎邸』の邸宅と庭園もむちゃくちゃ良くって。あちらも和風建築に迎賓的な洋館、そして周囲の見渡せる池泉回遊式庭園――という素晴らしい場所だったのですが、今回この和中庵を訪れて彦四郎自身が設計にも関わった(指示した)というのを目にして――ああこの藤井彦四郎という人はただ贅を尽くしているだけでなく、造形的・景観的なセンスも素晴らしい人だったんだろうと実感。

ちなみに藤井彦四郎という人物については近江商人屋敷の方でもふれたので割愛しますが…いち早く海外の繊維市場の動向をキャッチし、毛糸ブランドで成功を収めた人物。興した会社は現在は倉敷紡績(クラボウ)に吸収合併されています。すぐ下に哲学の道があり『霊鑑寺門跡』が隣接する鹿ヶ谷のこの一帯を大正時代に取得し、山を切り開いてこの「和中庵」を造営しました。ちなみに同じく近隣に残る国登録有形文化財『旧藤井繁次郎邸』(⇒文化遺産オンライン)は彦四郎の次男の住宅。こちらは個人邸なので非公開。

洋館の前にある広場にかつては和風の主屋が建っていたそう。洋館2階にはかつてその主屋と行き来していた通路の入口(現在はガラス張り)だけが残っているのですが――「かつては通路だった」とお聞きしなければ、まるで額縁を意識して意図的にデザインしたように見える。そのガラス窓からは京都盆地の逆側…嵐山?の風景までが絵画のように見渡せます。絶景。
洋館の現在の入口側の外観が地味に思えるのは「そもそも表から見えなかったから」ということですね。そしてノートルダム教育修道女会が取得し、修道院として利用していた際の十字架の跡が残るのも歴史が感じられてとても良い。

そして渡り廊下を通じて奥座敷(客殿)へ。数寄屋風の意匠も取り入れられた客殿は大文字山の傾斜の上に建ち、その斜面を利用した庭園もあります。この公開では庭園を歩くことはできないのと、『校舎が写り込んだ写真撮影はNG』。写ってないよねギリギリ隠れてるよね…?という写真だけ選んでいる…つもり。
高台の平地部は芝生を主体とした近代らしい和風庭園で、沓脱石の大きさが目を見張る!そして低地部には山からの小川が流れているそうで、上段からは大きな石橋“豊里橋”と茶室の姿が見えます(校舎に沿って建つので写真は無し)。ガイドの方も低地部に降りることは許されていないのだとか。

近江五箇荘の藤井彦四郎邸も迎賓館的な役割も兼ねていましたが、こちらの和中庵も賀陽宮恒憲王殿下、久邇宮多嘉王殿下といった皇族が宿泊に来られたそうなので、京都の財界では知られた別荘建築の一つだったんだろう。
そんな名建築も2000年代後半に一時は老朽化による解体が決定。その後の保存活動によって老朽化が進んでいた主屋だけの取り壊しに留まり、洋館・客殿は改修・修復を経て学校施設としての活用やこのような公開に至っています。

…なんだろうこの感情…一言で言うと「尊い」。関係者の想いも行動も。見学時などにモラル・マナーを守るのは勿論だけど、“こんな素晴らしい場所があるんだ”と伝えることでやはりこうした建物を残す意義、スピリットみたいなものが伝播したらいいなあ…なんて思う。

きっとお茶室からの眺めも素晴らしいはず。何年後かわかりませんがいつか見学できたらいいな。紅葉がお見事でしたが、哲学の道から更に坂を上る立地だからか人もさほど居なかった。東山の紅葉を愛でるには穴場!そして気に入った人には是非五箇荘の藤井彦四郎邸にも足を運んでみてほしい~。きっと好きなはず!

(2019年11月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

京都市営地下鉄東西線 蹴上駅より約2km(徒歩25分)
最寄バス停は「真如堂前」徒歩7分

〒606-8423 京都府京都市左京区鹿ケ谷桜谷町110 MAP

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