2023年、京の夏の旅で特別公開。京都・島原で創業300年超、唯一営業を続ける置屋/お茶屋の当時の文化を伝える貴重な建築と庭園。京都市指定有形文化財。
輪違屋について
【通常非公開/京の夏の旅2023で特別公開 ※1階のみ撮影可】
「輪違屋」(わちがいや)は江戸時代の京都を代表する花街だった「島原」で往時の面影を残す置屋。江戸時代後期の建築が京都市指定有形文化財。
現在も置屋兼お茶屋として営業されており、普段は“一見さんお断り”のお店ですが、2023年は5年ぶりに『京の夏の旅』で一般公開。貴重な置屋建築と共に2つのお庭が見られます。
国指定重要文化財の『角屋』(角屋もてなしの文化美術館)と並んで島原に江戸時代から残る数少ない花街の遺構・輪違屋。お店の歴史をさかのぼると、江戸時代初期の元禄年間(1688年〜)に創業。現在ミュージアムとして公開されている角屋と異なるのは、輪違屋は現在も《京都の太夫文化を後世へ伝える》べく、太夫・芸妓さんを抱え営業をしている、創業300年以上となるお店。
現在の建築は幕末の1851年(嘉永4年)の天明の大火の後、1857年(安政4年)の再建。明治時代のはじめ、芸娼妓解放令が布告された時期にお茶屋に転業しそれに伴い建築も一部改修されているそうですが、複数ある階段、そのうち表の導線の大きな階段、各部屋の動きが確認できる工夫…など置屋ならではの工夫が今に伝わります。
中でも(写真撮影は不可の)2階の意匠が素晴らしい。実際に使われていた和傘の和紙が障子に貼り付けられた「傘の間」の斬新さ、本物のモミジの葉で型を取り彩色した「紅葉の間」などの凝ったデザインが見られるほか、桂小五郎(木戸孝允)の書や公卿・近衛氏の筆による扁額なども。
1階部分では新選組・近藤勇の書(屏風)の残されている主座敷が公開。その東西にそれぞれお庭があります。
まず目にするのは西庭(中庭)。まず廊下の欄干の彫りがとてもオシャレ。エル字型の縦長のお庭なのですが、軒がとても広く、また角に柱がないので実際の面積以上に広く開放的に感じられます。また奥のつくばいに向かってとても緩やかに傾斜があるので、雨の日は流水庭園に様変わりしそうな細やかさ。いわゆる個人の邸宅と異なるのは、西側のガラス戸はすりガラスのような形で外が見えないので、戸を開けた時にこのお庭が視界に入って解き放たれる点。
そして座敷の奥に東庭があります。苔むす中に奥に六角灯籠、右手前に織部灯籠、そして左手にある春日燈籠の胴の部分だけが煙突のように置かれているのがユニークなお庭。こちらのお庭の方が穏やかな癒しの庭園のように感じられるのは、実際にこの床の間のある部屋はご主人の生活の場として使われていたこともあるからなのだとか。
特別公開に訪れた方はぜひお庭も堪能してみて。
(2023年7月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
JR嵯峨野線 梅小路京都西駅・丹波口駅より徒歩8分
京都市営地下鉄烏丸線 五条駅より徒歩20分
阪急京都線 大宮駅より徒歩20分
最寄りバス停は「七条壬生川」「島原口」バス停 徒歩6分
〒600-8825 京都府京都市下京区西新屋敷中之町114 MAP