“足立美術館”創始者・足立全康のルーツは砂紋がユニークな江戸時代の枯山水庭園。国指定重要文化財の大門や梵鐘も。
雲樹寺庭園について
「瑞塔山 雲樹寺」(うんじゅじ)は鎌倉時代後期に開かれた後醍醐天皇ゆかり臨済宗妙心寺派の寺院。“庭園日本一”で有名な『足立美術館庭園』を造った実業家・足立全康が若年期に通い、そのルーツとなったと言われる枯山水庭園があります。足立美術館からは約8km。2020年秋、初めて訪れました!
1322年(元享2年)、後醍醐天皇から“国済国師”、後村上天皇から“三光国師”の号を賜った孤峰覚明禅師が、牧新左衛門入道善興居士に寄進された地に創建。牧新左衛門は当地の豪族ですが、ググってると京都『松尾大社』や『泉涌寺』、『東寺』に牧新左衛門から送られた書状が残っているそう(管領・細川頼之に宛てたものも)。
禅師には後醍醐天皇から「天長雲樹興聖禅寺」と書かれた直筆の額も下賜され、その名から雲樹寺に。この額は大きな山門に掲げられています。
その山門からさらに参道の前部分にある「四脚門」(雲樹寺大門)は創建年代(鎌倉時代末期)に建立されたもので国指定重要文化財。その他にも三光国師の絵図や国師や後村上天皇の書、開山堂に安置されている日本に現存する最古の朝鮮鐘(高麗梵鐘)が国重文。
現在見られる寺観は江戸時代後期、1819年(文政3年)の火災の後に再建されたもので、先に挙げた国重文はそれを逃れて残ったもの。
方丈の南・西~北側に1690年(元禄3年)の中期伽藍完成を記念して作庭された、広さ1200坪の枯山水の禅宗庭園が広がります。
方丈南庭は勅使門を中央においた石庭。そして方丈の西~北は裏山の斜面を活かして多くのサツキ、ツツジが植わっており、地元では“サツキ寺”“ツツジ寺”とも呼ばれるそう(今回は紅葉も美しかった!)。
そして主庭は方丈北庭。白砂の中に苔の広がり美しさを見せる枯山水庭園で、石組はこぶりですが同地域の『乗光寺庭園』とも似た雰囲気を感じさせる。晩春には斜面も花で色とりどりになって、その苔や白砂とあいまってカラフルな姿を見せているんだろうな~。(頭上には毘沙門堂も。)
雲樹寺の庭園でユニークなのは間隔が大きめの砂紋。重森三玲さんの庭園で時折見かけるけど、そんなによく見かけるものでもない。これは意図されたデザインなのか…?と思ってお聞きしたら「使っている道具(トンボ?レーキ?)がたまたまそうだった」みたいなお答えだったけど。笑。でもすごく良いです。
『足立美術館』を立ち上げた足立全康は若い頃この庭園によく訪れていたそう。晩年になって「庭園を作りたい」「庭園と日本画の融合」という欲求に至ったルーツはその時の真っ新な思いつきではなく、元々島根・安来にもあった“庭園文化”がバックグラウンドにあったのだと感じさせる。
なお2020年秋には、日本庭園協会の島根県支部長もつとめる「庭のとき」仲佐修二さん作庭による前庭も完成。飛び石が高いといわれる“出雲流庭園”をさらにスケールアップさせたような高い飛び石が特徴的。主庭が“元禄の庭園”であるのに対して、こちらは“令和の庭園”と今後呼ばれることになるかも。
なお、孤峰覚明禅師は出雲市で『康国寺』の開山にもなっています。そちらも庭園が人気なのであわせてチェック。
(2020年11月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
JR山陰本線 安来駅より約6km(*駅にレンタサイクルあり)
安来駅よりコミュニティバス「雲樹寺入口」バス停下車 徒歩8分(時刻表はこちら)
〒692-0056 島根県安来市清井町281 MAP