檀林皇后ゆかりの神社に江戸時代に作庭された、杜若・つつじ・花菖蒲が彩り嵐山・北山を借景に望む回遊式庭園。
梅宮大社神苑について
「梅宮大社」(うめのみやたいしゃ)は奈良時代に一時政権を握った橘諸兄の母・県犬養三千代が橘氏の氏神として創建した神社。その名の通り梅の名所であり、春にはツツジやアヤメ、カキツバタの名所でもある池泉回遊式庭園があります。2020年春、初めて参拝しました。
平安時代、嵯峨天皇の妃・檀林皇后により現在地に移転。現在残る社殿は江戸時代中期の1700年頃に江戸幕府5代目将軍・徳川綱吉の命で再建されたもので、本殿、拝殿、楼門などが京都府登録有形文化財となっています。
同時期に作庭されたと推定されている社殿を取り囲む神苑は下記の3つのエリアにわかれます…が、今回はほぼ東神苑の話と写真。
■東神苑
“咲耶池”を中心とした池泉回遊式庭園。アヤメ、カキツバタ、ツツジと晩春に最も彩られるエリアで、自分が訪れた時も赤いキリシマツツジ、ヒラドツツジのトンネルが鮮やかだった〜!(でもその蜜に寄せられて大きな蜂も飛んでいたので・笑、そこは気をつけて)
明治から大正にかけて現在の規模に拡張されたそうで、京都の植音さんの作庭実績にも残りますが、池の中央の燕子花付近にある八ツ橋もその頃に設けられたものなのかな。名所の雰囲気が再現されていて良い感じ。
池の中央にある茅葺の茶室“池中亭”は江戸時代後期の1851年(嘉永4年)に建てられたもの。現在もとてもきれいな姿。そして庭園奥には池泉にせり出した和風建築“参集殿”が建ちます。これは昭和天皇の即位式のために造られた茶室を下賜されたもの。この周辺はモミジの新緑もきれい。
■北神苑
“勾玉池”を中心とした回遊式庭園。初夏に花菖蒲やアジサイが咲くエリア。大きな藤棚もありました。
■西神苑
椿と梅苑と主体とした、冬〜早春に見頃を迎える庭園。江戸時代には本居宣長がこの梅苑のことをうたったそう。
神苑内には平安時代の大納言・源経信がこの地(梅津)をうたった百人一首の歌の碑が残ります。
夕されば 門田の稲葉 訪れて 芦のまろやに 秋風ぞ吹く
この梅津地域は平安時代には貴族の別荘が多く造られた場所で(ちょっと離れてるけど『桂離宮』もそうした背景を元に造られたと言いますね)、この歌は経信が源師賢の梅津の山荘を訪れた際にうたったもの。東神苑で眺められる北山の借景、西の嵐山方面の美しい借景はその頃からの歴史的な景観なんだろな。また色んな季節に訪れたい。
(2020年4月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)