寺島蔵人邸庭園

Terashima Kurando Samurai House's Garden, Kanazawa, Ishikawa

加賀藩の中級武士・寺島蔵人の暮らした武家屋敷に残る、江戸時代に作庭された枯池式庭園「乾泉」。

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寺島蔵人邸庭園について

「寺島蔵人邸」(てらしまくらんどてい)は江戸時代後期の加賀藩の中級武士であり画家でもあった寺島蔵人の旧宅。江戸時代から残る武家屋敷として金沢市指定史跡となっており、当時作庭された回遊式庭園も残ります。

寺島蔵人は加賀藩の中級武士として越中高岡町の奉行や、藩の農政や財政の役職を歴任した武士。加賀藩12代目藩主・前田斉広の時代には有能な藩士を抜擢した「教諭方」という要職にも選ばれましたが、斉広が亡くなり13代目藩主・前田斉泰に代わった後は藩の重臣と対立、藩政から退くことになり、晩年は能登に配流されその先で最期を迎えました。
蔵人が藩の重臣と対立した理由は、領民思いだった蔵人の正義感の強さによるもの――とも言われます。数多くあった中級武家屋敷の中でこの邸宅が残るのは、地元の人々の支持によるものもあるのかもしれない?

「寺島蔵人邸」は金沢城の大手門跡と主計町・ひがし茶屋街の中間点にありますが、この付近は江戸時代には寺島邸と同規模の武家屋敷が立ち並ぶ中級武士の居住地区だったそう。寺島邸は蔵人の祖父の時代、江戸時代中期に造られたものと推定されており、江戸時代の中級武家屋敷としての姿が良好に残されていたため昭和後期に金沢市指定文化財史跡に。

邸宅の奥には苔むした庭園が広がります。池泉回遊式庭園――と資料には書かれているけど、作庭当初から枯池式の庭園だったようで、庭園の名を『乾泉』と呼んだそう。庭園を眺める座敷には江戸時代の画家(国宝や国重文の作品も残している)浦上玉堂が滞在時に描いた「乾泉」の扁額が飾られています。
庭園は樹齢300年とも言われるドウダンツツジが見所だそう。今回訪れたタイミングではドウダンが花を付けるには少し早かったけれど…、晩春や紅葉時期にはきっときれいなのだろうなあ。総数200本を超えるという樹木の中でピックアップされているのが、ツバキ、サザンカ、モミジあたり。秋は勿論、冬など寒い季節になっても楽しめそう。

画家としても多くの日本画を残した寺島蔵人。交流のあった浦上玉堂や狩野派の絵画も収集していたそうで、その貴重なコレクションは邸宅とともに昭和後期に寺島家から金沢市に寄贈。
この寺島蔵人邸では蔵人の絵画をはじめとして、同家が所蔵していた美術工芸品が季節ごとに展示されています。また違う季節にも訪れてみたい!

(2019年3月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

JR北陸新幹線 金沢駅より徒歩約20分強(市内各所にレンタサイクルあり)
金沢駅より路線バス「橋場町」バス停下車徒歩5分

〒920-0912 石川県金沢市大手町10-3 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は2,000以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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