竹平楼 庭園

Takeheiro Garden, Echigawa, Shiga

明治天皇が滞在された近代和風建築が国登録有形文化財。中山道宿場町の老舗料亭で、“小堀遠州の流れを汲む”庭園や歴史的人物の書画と共にお食事を。

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竹平楼 庭園について

【お食事も予約制】
「竹平楼」(たけへいろう)は滋賀県愛荘町の中山道六十九次・65番目の宿場町「愛知川宿」にある老舗料亭。明治天皇が北陸道・東山道巡幸の際に立ち寄られた御座所(御休憩所)が残り、広間と共に明治時代の近代和風建築2棟が国登録有形文化財。また“大名茶人・小堀遠州の流れを汲む庭園”が残り、お食事をしながら鑑賞することができます。

今日も旧街道の雰囲気を残す旧中山道「愛知川宿」。往時は約600mの並びに28軒の旅籠が並んでいたとか。
旧中山道に面する「明治天皇御聖蹟」の石碑が印象的な料亭「竹平楼」もルーツは旅籠。江戸時代中期の1758年(宝暦8年)に初代の“平八”が創業した旅籠「竹の子屋」が前身。大正時代初期に「竹平楼」に改め、今日では地域を代表する料亭として知られます。

国登録有形文化財の「竹平楼御在所」が建立されたのは1878年(明治11年)(※表門・玄関もその時。同じく登録文化財の広間はそれより約30年後の1911年・明治44年)。それまでいち旅籠だった「竹の子屋」(西村平八邸)が本陣や脇本陣を差し置いて当時の滋賀県知事と品川弥二郎により明治天皇の御小休所に選ばれ、そこから急遽約70日の工事にて竣工。
ちなみに明治天皇の御巡幸に際して建立された滋賀県の近代和風建築の一つとして長浜の『慶雲館』がありますが、この竹平楼の御在所は実はそれよりも古い!

手がけた大工棟梁「大重」は近江五個荘を拠点に近代京都、滋賀で活躍された宮大工・市田重郎兵衛。京都『東本願寺』の大門、『知恩院』の阿弥陀堂、『仏光寺』の阿弥陀堂(本堂)が代表作として知られるそう。そしてこの御在所、当初は京都に向けた往路でのみ滞在予定だったところ、政府側の予定変更によって東京までの復路でも滞在されたとか。その後「幸生殿」と名付けられ、現在はその名の額が掲げられています。

明治天皇の他にも、その御巡幸では同行していた岩倉具視大隈重信井上馨山岡鉄舟ら同時代の著名人が滞在。それ以降も渋沢栄一、“明治の三筆”のひとり・巌谷一六らが滞在し書を残しているほか、近代京都画壇で活躍した西山翠嶂など著名な画家の作品も室内に掲げられています。

庭園について。文化財の広間・御在所から眺められる庭園が主庭園で、その他にも広間の逆側のお庭、そして増築された玄関側の離れのお庭(枯山水庭園)と三箇所あります。このうち主庭園は、江戸時代後期に作庭された“小堀遠州の流れを汲んだ庭園”をベースに、代々の当主が手を加え拡げられた庭園で、滋賀の名所を選ぶ「湖国百選」にも選定。

この“小堀遠州の流れを汲んだ”という言葉に関して。この言葉以上のはっきりした言葉は不明なのですが、江戸時代後期の近江には茶道「遠州流」の中興の立役者で徳川将軍家の茶道師範も努めた茶人・辻宗範という人物が居ました。この方自身の残した、有名な公開庭園は(たぶん)無いのですが、彼から作庭を学んだ勝元鈍穴は近江・五個荘を拠点に作庭家として活躍。このお庭は勝元鈍穴っぽい印象は受けないので…辻さん、またその系統の方の関与が気になる。

現在の庭園はより大きな広間からがメインのビューポイントにも思える…けど、現在の広間より先にあった建築は御在所。明治天皇は竹の子屋に滞在の際に、庭の池の生けた鯉や鰉(ヒガイ)を掬って喜びになられた——というエピソードがあるとか。今のお庭は池泉が目立つお庭…というよりはマツやサツキ・ツツジの多くの刈込み等からなる植栽と「流れ」が中心のお庭と印象で、“近代以降”の日本庭園といった趣き。

これらのお庭や、時代の要人・美術家の書画を眺めながらの贅沢なお食事の時間。グループで旅行される際はぜひご予約の上ご利用してみて。

(2025年9月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

近江鉄道 湖東近江路線 愛知川駅より徒歩15分
JR琵琶湖線 能登川駅より路線バス「不飲橋」バス停下車 徒歩3分

〒529-1331 滋賀県愛知郡愛荘町愛知川1608 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は2,000以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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