棟方志功も好んだ“平家の落人”の屋敷に残る庭園は、作庭者に修学院離宮の庭師・広瀬万次郎の名も。石川県指定名勝。
平家庭園について
「平家庭園」(たいらけていえん)は源平時代の平家の大将・平維盛の重臣で、いわゆる“平家の落人”となった平式部大夫を祖として約800年続く家系。江戸時代には天領だった西能登のこの地で大庄屋となり、その当時作庭された庭園が石川県指定名勝となっています。
2020年10月に5年半ぶりに能登半島へ、そして初めて西能登へ。同じく石川県指定名勝の『妙成寺庭園』とこちらを訪れたくて…両者の距離は約8km。本当は路線バスで巡りたかったけど、乗継のこと等色々考えた結果…羽咋駅から片道15kmのレンタサイクルを利用。切替がないのはつらいけど…早い時間から借りられるし、廃線跡?が長い距離に渡ってサイクリングロードとして整備されているのでその点はめちゃめちゃ快適です。
平家のある志賀町の高浜という町は漁港や砂浜もあって、お寺や宿泊施設なども多く、駅から遠いだけでちゃんとした規模のある町。平家は落ち人としてこの地に逃れひっそりと暮らしていましたが、室町時代に能登国守護・畠山氏に家臣として迎えられました。『妙成寺』を開いた日乗上人も平家の出身。
江戸時代には天領地の13村(ここから七尾の方まで)を支配した大庄屋に。当時造営のはじまった屋敷は約6,000坪の広さをほこり、庭園も江戸時代初期に書院に造られた池泉鑑賞式庭園と、江戸時代中期に作庭された奥行きのある後庭と二つの庭園があります。あと一面の苔の前庭。
その書院の雰囲気…違い棚や欄間の意匠と、苔むした書院庭園の雰囲気がすごく良くって…時間を忘れてぼーっと眺めていたくなる。
ところで、茶室から眺める奥庭の作庭者・広瀬万次郎。どこかで名前を見たことがある気がするな…と「おにわさん」の中で検索したら、新潟の豪農の庭園『椿寿荘庭園』の作庭者だった。新潟(の郊外)と石川(の郊外)で、歴史上は有名ではない同一の庭師の名が登場するってすごく面白いなーと思うし、この広瀬万次郎は京都の名園『修学院離宮』の出入り庭師だったという情報をこの地で得られたのも行脚冥利に尽きる。(両庭園、少し時代が違うので、●代目…とかがあるかもしれない)
その他にもお庭には室町時代の石灯籠や江戸時代から代々引き継がれている史料・美術品も。また昭和20年頃には棟方志功がこの平家に滞在したことも。志功は「お礼に襖に絵を描きたい」と申し出たものの、当時はまだ有名でなかったため当時の当主が断ってしまったという逸話も。そんな有名アーティストが虜になるのも頷ける、幽玄な空間が残っています。長い距離チャリこいだ甲斐あった…!!!
※余談ですが、今回訪れた西能登のサイクリングコースや海沿いはマツ枯れがすごく多かった。ちょうど軒先でマツのお手入れをされている植木屋さんが居たので聞いてみると、これはここ1・2年のことで夏の猛暑とマツ食い虫の合わせ技だと。平家にも樹齢600年という大きなマツがあるので心配ですね…。
(2020年10月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
JR七尾線 羽咋駅・のと鉄道 和倉温泉駅より路線バス「高浜」バス停下車 徒歩25分
羽咋駅より約15km(駅にレンタサイクルあり)
〒925-0167 石川県羽咋郡志賀町町30-63 MAP