“日本一の塩田地主”の邸宅に京の茶人・久田宗参が作庭した、年2日だけ特別公開される庭園と茶室。国指定名勝。
田淵氏庭園(田淵記念館)について
【庭園は通常非公開・例年秋に特別公開】
「田淵氏庭園」(たぶちしていえん)は塩田地主・塩問屋として江戸時代以降の赤穂藩の財政を支えた田淵家の邸宅に江戸時代中期以降に作庭された回遊式庭園で、国指定名勝。『赤穂市立美術工芸館 田淵記念館』に隣接しています。
庭園は普段は非公開で、例年11月中旬に2日間程度特別公開されています。2019年に初めて訪れました!
忠臣蔵で知られる赤穂藩。立藩した頃の藩主・池田氏(岡山藩主・池田氏の分家)やその後を継いだ浅野氏の時代から塩田開発が推進され、赤穂の塩は藩の財政を支える特産品に。
中でも「川口屋」という屋号で塩田、塩問屋、塩廻船を経営した田淵家は江戸時代末期には換算すると1万石近い塩田を所有。東は宮城県・西は宮崎県まで塩を輸出し、“日本一の塩田地主”として知られたそう。
隣接する『田淵記念館』はそんな田淵家から寄贈された古美術品、古文書を展示・保存する施設として平成9年に開館。赤穂城からは約2km。寄贈された中には茶器も多く含まれていたそうで。今回の特別見学には併せて催されていた茶会の参加券もついていたのでせっかくなので参加してみたのですが、最近見たばかりの京都『南禅寺大寧軒庭園』の藪内透月斎の作の茶道具でお茶を頂いたのでめちゃめちゃ恐れ多かった…(お茶室は沢山見ているけどお茶会への参加経験はほぼ無くマナーもよく知らず…)。貴重な体験。
国指定名勝「田淵氏庭園」は赤穂の御崎地区に位置する三崎山の斜面を利用した回遊式庭園。江戸時代中期の1764年、田淵家の五代目・久兵衛政武が師事していた“久田流”の久田宗参を京都から招き、現在は中段に位置する茅葺きの茶室『春陰斎』とその茶庭として作庭されたことがはじまり。
最上段にある『明遠楼』はそれ以前に藩主・森忠洪が訪れる際に四代目・市兵衛春元が築造したもので、1階に茶室、2階は座敷になっています。
河川と山々の風景の素晴らしさが特筆すべき点だけど、現在見える森がかつて田淵家が所有していた塩田だった土地だそう。また当初は赤松滄洲が「嘯風楼」と命名したそうですが、江戸期の儒学者・伊藤東涯の扁額を明治時代に入手したことから「明遠楼」と改称したのだとか。
最下段にある邸宅(書院)は順路では最初にあたりますが、この中では最も遅く1792年に造営されたもの。書院前に広がる池泉式庭園は書院が完成した翌年の作庭。流れ落ちる滝はこの三崎山から引かれた水。背景に茶室が見えるのが何よりかっこいい点ですが、ソテツが複数植栽されている点が当時の六代目・久兵衛政俊のコダワリだった…のかはわかりませんが、この庭園の特徴でもある。他の赤穂市の『赤穂城庭園』や『大石内蔵助庭園』とは違うところ。
書院に上がることはできませんがこの中にも茶室が2つあり、庭園内には合計4つも茶室があります。古田織部ゆかりの石造物も庭に配されるなど田淵家の“茶の湯”へのコダワリが強く感じられる空間。見学に参加されていたのは地元・赤穂の方ばかりでしたが、より知られて欲しい!
(2019年11月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
JR赤穂線 播州赤穂駅より約4km(駅にレンタサイクルあり)
播州赤穂駅より路線バス「川口町東」バス停下車すぐ
〒678-0215 兵庫県赤穂市御崎314-10 MAP