漸草庵 百代の過客 / 草加松原

Zensoan Garden / Sokamatsubara, Soka, Saitama

松尾芭蕉が“おくのほそ道”で詠んだ国指定名勝・草加松原。その松原をのぞむ茶室と庭園は、日本文学を世界に伝えたドナルド・キーンによる命名。

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漸草庵 百代の過客 / 草加松原について

「漸草庵 百代の過客」(ぜんそうあん はくたいのかかく)は国指定名勝『おくのほそ道の風景地 草加松原』をのぞむ数寄屋建築/お茶室で、草加市文化会館に隣接。その命名/扁額の揮毫は日本文学研究者:ドナルド・キーンさんによるもの。狭山茶とお茶菓子のいただける「お休み処」(立礼席)もあります。

江戸時代の代表的な俳人・松尾芭蕉がかつて歩き記した『おくのほそ道』。その中で歌われた日本各地の風景地は2014年に“ランドスケープの重要文化財”国指定名勝に選ばれました。その中で最も東京に近い(唯一の首都圏)のが「草加松原」。おくのほそ道の旅で江戸を発った芭蕉が最初に立ち寄った景勝地。

日本史でも取り上げられる機会が多い平泉(夏草や/兵どもが/夢の跡)等と比べると「東京23区に隣接する(割と都会の)草加にそんな景観があるの?」とも思っていたのですが、実際訪れてみると街中に立派な松並木があって驚き!
その数634本。国の文化財の中では他にも海沿いの松原はいくつかありますが(『虹の松原』『気比の松原』など)、川沿いの「松原」(※松並木)は珍しい存在。江戸時代には1000本以上あったというマツも、昭和の戦後には2桁まで減ってしまったそうですが、自治体・市民の保全活動により現在は往時の様な景観が取り戻されています。

そんな松原の国の名勝指定と、草加市政60周年を記念して2019年3月に開館した文化芸術関連施設が「漸草庵 百代の過客」。命名/揮毫をしたのは世界へ日本文学を紹介したドナルド・キーンさんで、「百代の過客」は氏の著書のタイトルでもあります。草加市文化会館でも何度も講演し草加松原の価値向上につとめた氏ですが、この施設の開館に先立つ2019年2月に他界。茶室前には顕彰碑も立ち、草加松原にも本人揮毫の石碑があります。

旧日光街道の三番目の宿場町だった「草加宿」、草加せんべいが名産として有名ですが「ゆかた」も実は名産品(埼玉県の伝統工芸品に指定)。そんな和の文化や芸術に親しむ施設として建てられたこの数寄屋建築は、小間(三帖台目茶室)をはじめとして、立礼席を含め5つの和室から構成。茶室に付随した茶庭・露地庭もあり、希望して茶室の利用等がないタイミングであれば見学が可能。

建築を手がけられたのは昭和の名工「数寄屋師 藤森明豊斎」の技術を継承し首都圏や京都でも数寄屋建築/茶室を手がけられている藤森工務店さん。茶道遠州流、宗徧流の家元の御用達でもあり、東京では『国営昭和記念公園』の和風建築などを手がけられています。

関東ではあまり見ない『樽茶室』があるのもユニークな点!他県の醤油醸造所から移築、再利用されたというこのお茶室も貸室として借りることが可能だそう。

各種イベントや撮影で利用可なほか、立礼席での「お休み処」では狭山抹茶をいただきながら、立礼席には珍しい大きな窓から正面に国指定名勝・草加松原の景観をのぞんでまったりすることができます。やはりこのお茶室の特別なポイントはこの景観。東京近郊の穴場の散歩道としてもオススメ!

(2024年8月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

東武伊勢崎線 獨協大学前駅より徒歩7分

〒340-0013 埼玉県草加市松江1丁目1-5 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は2,000以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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