白水阿弥陀堂 浄土庭園

Shiramizu Amida-do Jodo Garden, Iwaki, Fukushima

平泉・奥州藤原氏出身の尼僧が建立した、平安時代から残る福島県唯一の国宝建築“阿弥陀堂”と世界遺産“毛越寺”と並ぶ東日本最大級の浄土式庭園。国指定史跡。

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白水阿弥陀堂 浄土庭園について

「白水阿弥陀堂」(しらみずあみだどう)は福島県いわき市にある、福島県唯一の国宝建築。平安時代に建立されたお堂の周囲にはその時代の代表的な庭園様式の「浄土庭園」が広がり、庭園を含む境内も「白水阿弥陀堂境域」の指定名称で国指定文化財(国指定史跡)となっています。
2025年、久々に訪れたので写真を更新して改めて紹介。

福島県の浜通りの代表的な都市・いわき市の郊外に佇む国宝建築、白水阿弥陀堂。観光面では白水〜の名前で広く知られていますが、寺院としては真言宗智山派の『無量寿院 願成寺』(がんじょうじ)に属します。

その歴史について。願成寺の創建と阿弥陀堂の建立は平安時代後期の1160年(永暦元年)。平安時代に常陸平氏の一族からこの地の豪族となり、のちに戦国大名となる岩城氏の祖・岩城則道。その妻で平泉「奥州藤原氏」の礎を築いた藤原清衡の娘・徳姫が、岩城則道の没後にその冥福を祈る為に建立。後鳥羽上皇により勅願寺に定められます。

そして建立以来約900年のあいだ目立った戦乱に巻き込まれることなく、平安時代の貴重な建築を今日まで残します(※現代には東日本大震災による被災がありましたが、修復され今日に至ります)。阿弥陀堂の建築の他にも仏像(阿弥陀如来及両脇侍像、持国天立像・多聞天立像)も国指定重要文化財。

その阿弥陀堂を取り囲む広大な池泉回遊式庭園。京都の『平等院』、平泉の『毛越寺』など世界遺産にも登録されている平安時代〜鎌倉時代初期を代表する庭園様式「浄土式庭園」の、東日本では『毛越寺』と並ぶ最大級の庭園。
なお現在の庭園は昭和時代の発掘作業で発見され、1972年(昭和47年)以降に復元されたものですが、その中央の阿弥陀堂と共に造営されたもの——と推測されています。建築の規模は違えど『平等院』と同様に阿弥陀堂が中の島に存在している。また赤い橋の近くで池から出ている庭石も気になる。

現存する例もあまり多くない歴史的な浄土式庭園が、歴史的な庭園が決して多いわけではない関東平野北東部に残されていることもとても興味深いし、奥州藤原氏・平泉(決して近くはないけれど)との文化的な繋がり、京都〜関東〜平泉の間の文化の流れも感じられる、そんな場所。(いわき市には「平」というエリア・駅もありますが、白水=「泉」ともども「平泉」から取られた…という説も。)

その庭園遺構そのものが貴重ですが、周囲を山に囲まれた借景(この庭園ではハスの花に見立てられている…とか)や、秋には大イチョウやモミジなどが庭園を美しく彩ります。秋には例年紅葉のライトアップも開催。「国宝」を目的に訪れる方もぜひ庭園も散策されてみて。

(2011年9月、2016年11月、2025年8月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

JR常磐線 内郷駅より徒歩25分
JRいわき駅・内郷駅入口より路線バス「あみだ堂」バス停下車 徒歩5分

〒973-8405 福島県いわき市内郷白水町広畑221 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は2,000以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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