志賀直哉旧居庭園

Former Shiga Naoya House Garden, Nara

文豪・志賀直哉が自ら設計、京都の数寄屋大工・下島松之助が手掛けた素敵近代和風建築。異なる3つの庭園も!

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志賀直哉旧居庭園について

奈良の春日山を眼前にのぞむ「志賀直哉旧居」(しがなおやきゅうきょ)は近代を代表する小説家のひとり・志賀直哉が昭和初期に約9年間暮らした邸宅。国登録有形文化財および奈良県指定有形文化財となっています。現在は奈良学園が所有するため「奈良学園セミナーハウス」の呼称も。

2020年7月に初めて訪れました。奈良の中心街から見ると、春日大社の更にその向こうにあるこの邸宅。観光コースから若干外れていてこれまで何度か訪れた中では気づいてなかったのですが…その和洋折衷の近代和風建築、めちゃくちゃ良かった…!志賀直哉本人が設計に携わった邸宅、近代の文豪が自らの身を置く場のこだわりをとても感じた素敵な空間でした。

旧志賀直哉邸の残る高畑町。かつては春日大社の神職が暮らした社家の集まるエリアであり、風光明媚なこの界隈を好んで近代には武者小路実篤尾崎一雄、梅原龍三郎などなど文人・画家が移り住んだ時代も。そんな彼らと志賀はこの邸宅でもたびたび交流し、“高畑サロン”と呼ばれたとか。
なのでこの建物以外にも大きな邸宅が多く残り、お隣の『中村家住宅(旧足立家住宅)』も洋画家・足立源一郎の自邸として建てられた大正時代の建築で国登録有形文化財(カフェみたいなんだけど今回は開いてなかった)。

志賀直哉は大正14年、42歳の時に京都から奈良へ移住。その数年後の1929年(昭和4年)に自らの設計の下この邸宅を新築・転居しました。京都の数寄屋建築家(棟梁)・下島松之助とともに作り上げたその建築は数寄屋造り建築に洋風の食堂・サンルームが連なる和洋折衷の近代住宅。好きだわー。

■素敵ポイントその① 池泉庭園を目の前にのぞむ書斎
梁のある玄関の和風の空間から、一転書斎は洋風な雰囲気が取り入れられた空間、そして池泉庭園へ向けて広く窓が取られています。この部屋で小説『暗夜行路』を書き上げたとか。
この真上にある2階の客間からは目前に春日山がのぞめます。

■素敵ポイントその② 茶室・露地庭
書斎から近くにあるのが茶室、そして建物の中庭が露地庭となっています。志賀自身は茶の湯にはさほど傾倒しておらず、この茶室を造ったのは裏千家関係の数寄屋大工であった下島松之助の意向も取り入れられたもの。
造園に関する記述はないけど、露地や書斎前の日本庭園などは下島が主導したものなのかも。

■素敵ポイントその③ 近代建築な食堂・サンルーム
露地庭を挟んでこの近代建築っていう景色の移り変わりが最高!サンルームなんかは薄暗い書斎・茶室とは一気に空気感も変わって。
そしてその前には洋芝の張られたもう一つの庭へと繋がります。この庭からは子供部屋にも繋がっていて、ほんとに“文豪の家”と“家族の家”と2つの空間がこの邸宅にはある。

志賀がこの邸宅を去り東京へ移住した後、戦後は米軍宿舎に、その後厚生省の保養所『飛火野荘』となり、昭和53年に奈良学園に譲渡・公開がスタート。比較的近年の2008年に奥村組・桜井市の宮大工、山本工務店によって昭和初期の当初の姿に現在の姿に復元修復されました。

3箇所ある庭園だけで見ると特別すごいというわけではないかもしれないけど、空間全体が個人的にはどストライクだったし近代住宅好きはぜひ訪れてー!

(2020年7月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

近鉄奈良線 近鉄奈良駅より徒歩25分
JR奈良線・大和路線 奈良駅より徒歩35分
※いずれも駅周辺にレンタサイクルあり
奈良駅・近鉄奈良駅より周遊バス「高畑駐車場・浮見堂」バス停下車 徒歩5分

〒630-8301 奈良県奈良市高畑町1237-2 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は2,000以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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