石山寺庭園

Ishiyamadera Temple Garden, Otsu, Shiga

紫式部・源氏物語ゆかりの国宝寺院は“花の寺”としても人気。“無憂園”等の庭園や近江八景“石山の秋月”、天然記念物の奇石“石山寺硅灰石”も!

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国宝・石山寺について

「石山寺」(いしやまでら)は奈良時代に創建され、国宝の本堂・多宝塔を有する滋賀・大津を代表する寺院の一つ。紫式部『源氏物語』を着想・起筆した“紫式部・源氏物語ゆかりの寺”としても有名。境内には『無憂園』『朗澄律師大徳 遊鬼境』や牡丹園・梅園など複数の庭園があります。西国三十三所観音霊場13番。

実は訪れたことがなかった石山寺、2022年5月に初めて拝観しました。

その歴史は奈良時代の747年(天平19年)、聖武天皇の勅願により、東大寺を開いた僧・良弁を開山として開かれました。

現在の山号を含めた寺名は「石光山 石山寺」。境内にある国指定天然記念物の真っ白な岩盤『石山寺硅灰石』がその由来ですが、奈良・東大寺の建立の際に良弁がこの岩の上で資材として必要だった“黄金”の産出について祈願した所、それが叶い、聖徳太子の念持仏を安置する草庵が建てられたのが始まり。
また琵琶湖から流れ出る瀬田川に面した立地から東大寺建立の為の木材の集積地としての役割も果たし、当初は東大寺との結びつきが強かったとか。

平安時代に入ると平安京に住まう貴族との結びつきが強くなり、先述の紫式部のほか、清少納言『枕草子』藤原道綱母『蜻蛉日記』など主に女流の文学作品に登場。また平安時代に東大寺と同じ華厳宗から現在の真言宗へと改宗されました。

懸造の姿が特徴的な国宝の本堂のうち内陣は平安時代の1096年(永長元年)に建立された滋賀県最古の建築。内部には紫式部にちなんだ「紫式部源氏の間」も。「石山寺硅灰石」の上にそびえるもう一つの国宝建築“多宝塔”は鎌倉時代の1194年(建久5年)に将軍・源頼朝に寄進されたものと伝わります。

そのほか建造物では同じく源頼朝が寄進したと伝わる鐘楼、室町時代建築の御影堂、桃山時代建築の東大門・蓮如堂・経蔵・三十八所権現社本殿が国指定重要文化財。
その他にも多くの国宝・重要文化財級の古文書/仏像/石造物/絵画などの美術品…を所蔵。滋賀県に多い天台宗寺院は戦国時代に織田信長による焼き討ち等の戦乱で多大な被害があったのに対し、石山寺は幸運にも戦乱による被害が小さかった。

建築に対して、石山寺の“ランドスケープ”は文化財指定こそされていないものの、近江八景“石山の秋月”が有名で、境内の高台分に建つ“月見亭”は平安時代後期の後白河天皇が行幸した際に建立されたとか(現在の建築は江戸時代初期に再建されたもの)。普段は立ち入れないその中からは同じ近江八景の“瀬田の唐橋”や琵琶湖の眺望も楽しめるとか。中秋の明月に合わせて行われる“秋月祭”では立ち入れるのかな?

また隣接する“芭蕉庵”は近隣の『幻住庵』に滞在していた俳人・松尾芭蕉にちなみ名付けられた茶室。芭蕉も石山寺をたびたび訪れたそう。

そして門前の『朗澄律師大徳 遊鬼境』(朗澄大徳ゆかりの庭園)から始まり、さまざまな庭園があります。

■拾翠園(5〜6枚目)
参道の途中、右手側にある池泉庭園。その先の“くぐり岩”など含め、岩壁の地形を活かした庭園。

■普賢院跡庭園(15〜17枚目)
先述の“月見亭”の麓、その斜面には一つの庭園のような迫力ある石組が。江戸時代の再建の際からあるものなのかな〜。その傍に、かつて室町時代頃まで存在した「普賢院跡」の説明板が。

■梅園〜牡丹園(19〜20枚目)
境内の上段部にある紫式部展〜源氏文庫の周辺には初春に見頃を迎える梅園“東風の苑”や牡丹園が。その他にも桜、ツツジなどが多く植栽された石山寺は“花の寺”としても人気。

■無憂園(21〜24枚目)
石山寺で最も大きな庭園は無憂園。琵琶湖をかたどった池や滝からなる池泉回遊式庭園で、池の畔に花菖蒲が咲く初夏が見頃だそう。その奥へと進むと“八大龍王社”や“源義平かくれ谷”も。

■密蔵院 前庭(25枚目)
島崎藤村ゆかりの塔頭寺院。拝観はできませんが、門前から見える前庭の苔むした雰囲気もすごく良い…。

■朗澄大徳ゆかりの庭園(朗澄律師大徳 遊鬼境)(26〜28枚目)
石山寺の東大門を入る前、瀬田川寄りにある池泉庭園。朗澄律師大徳は“石山寺中興の祖”と言われた名僧。池泉の立石に刻まれた鬼は石山寺縁起絵巻に描かれた死後の朗澄律師の姿で、全体的に石組に迫力のあるこの庭園は比較的近年の1999年に作庭されました。

四季の花々の他にも境内には2,000本のモミジが植っており、例年秋には紅葉ライトアップも。2024年、大河ドラマで参拝者が増える前の今のうちに!ぜひ訪れてみて。

(2022年5月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

京阪石山坂本線 石山寺駅より徒歩10分
JR琵琶湖線 石山駅より2.5km(徒歩30分)
石山駅より路線バス「石山寺山門前」バス停下車 徒歩1分

〒520-0861 滋賀県大津市石山寺1丁目1-1 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は1,900以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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