湖東三山と並ぶ滋賀の紅葉の名所。観楓期に“標月亭”から眺める、鈴鹿山脈と空を切り取った借景庭園。
永源寺含空院庭園について
「瑞石山 永源寺」(えいげんじ)は“湖東三山”と同じく湖東地方の紅葉の名所として知られる、臨済宗永源寺派の大本山寺院。紅葉時期(観楓期)には境内のライトアップや「含空院庭園」(標月亭庭園)の特別拝観も。一級河川・愛知川が境内のすぐそばを流れ、“永源寺と奥永源寺の山村景観”が日本遺産『水と暮らしの文化遺産』に構成されています。
2020年秋、湖東三山を巡った足で永源寺も初めて訪れました。創建は南北朝時代の1361年(康安元年)。当時の近江国守護・佐々木氏頼(六角氏頼)が帰依していた寂室元光禅師(正燈国師)を招いて開かれました。
この寂室元光禅師は30代の頃には元に渡り現地の天目山などで修行、帰国し高名となった後は朝廷や室町幕府からは同じ臨済宗の大本山である京都の『天龍寺』や鎌倉の『建長寺』からの招きも受けましたが、天目山を思い起こさせる永源寺の深山と幽渓の雰囲気を好みこの地に留まり続けたそう。
寂室元光禅師は書にも優れていて、師の残した各種の書物や寂室和尚坐像が国指定重要文化財となっています。
湖東三山のその他の寺院と同様、戦国時代に戦災により焼失(天台宗じゃないので織田信長の焼き討ちはなかった)。江戸時代に入り、後水尾天皇とその正室・東福門院の帰依と彦根藩主・井伊家の援助により再興。
現在残る建造物のうち、総門、方丈(本堂)、法堂、開山堂、鐘楼が江戸時代中期の1700年代の建築。
そして滋賀県指定有形文化財となっている山門はそれより少し後の1802年(享和2年)の建築。棟梁をつとめたのは長浜の中村出羽。
境内の各所に枯山水庭園風の石組がありますが、“庭園”と名のつく場所は別料金でお抹茶とともに眺められる「含空院庭園」…公式サイト等ではその表記ですが、実際にお抹茶をいただく場所は1935年(昭和10年)に改築された客殿「標月亭」なので、現地では「標月亭庭園」と表記されています。
標月亭と隣接する「含空院」(がんくういん)はかつて56あった僧坊のうち唯一残る塔頭寺院。室町幕府4代目将軍・足利義持に扁額を賜った歴史を持ち、現在でも永源寺の住職の居住場所(兼修行道場)となっているそう。
その名の通り、建物のある高台からは空と鈴鹿山脈だけを切り取って眺められるロケーション。鈴鹿山脈を借景とし、手前にモミジ・奥にサツキが配された一面の苔庭を眺めることができます。
現在の含空院の建物は比較的新しく、2015年~2016年にかけて新築されたもの。施工されたのは地元・東近江の社寺建築巧技工務店で、庭園は京都の『天龍寺庭園』等の御用達・曽根造園の作庭。
なお、従来の含空院の建築は広島県福山市の『神勝寺 禅と庭のミュージアム』に移築されているそう。そういえば神勝寺は永源寺派だったなあ。名和晃平と中根庭園に夢中で建物のことあんまり頭になかった…次回訪れる時は探してみたい。
総門へと至る前の総門には江戸時代の石仏群や彦根藩四代目藩主・井伊直興の墓碑、霊廟なども。湖東三山を自家用車で巡る際は永源寺もあわせてチェック!
(2020年11月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)