泉涌寺本坊庭園“仙山庭”

Sennyuji Temple Honbo Garden, Kyoto

皇室ゆかりの“御寺”に重森三玲が作庭した“仙山庭”や、秋篠宮文仁親王殿下御命名の庭園“五行の庭”も。(通常非公開)

庭園フォトギャラリーGarden Photo Gallery

泉涌寺本坊庭園“仙山庭”“五行の庭”について

【通常非公開/2022年秋は「京都非公開文化財特別公開」で公開?】
「泉涌寺」(せんにゅうじ)は皇室の菩提寺“皇室香華院”として知られる、真言宗泉涌寺派の総本山寺院。“御寺”(みてら)の呼称でも知られます。の仏殿を中心とする格式高い伽藍のほか、『御座所庭園』が特別拝観できます。

>> 泉涌寺の歴史と御座所庭園についてはこちら

2021年11月に約5年ぶりに『御座所庭園』を拝観したら、ちょうど泉涌寺本坊の通常非公開エリアで現代アート・イベント『未景 -御寺・ART・いのり-2021』が開催されていた(初日でした。2021年は12月5日まで)。

普段見られない庭園がありそうだな、確か非公開のの庭園があったような…と思って鑑賞したら、予感は当たって順路の一番奥で重森三玲作庭の“仙山庭”が拝観できた!のでその他の庭園とともに紹介します。(※なお『御座所』の特別拝観では堂内の撮影禁止ですが、このアート展の公開範囲は撮影OKでした。)

■妙応殿庭園“仙山庭”
順路で言うと最奥、泉涌寺本坊とコンクリート造りの妙応殿にあるのが重森三玲による庭園“仙山庭”。氏の晩年、1973年(昭和48年)の作庭。

書院・廊下・妙応殿のロビーに囲まれた空間に白砂が敷かれ、その上に18個の青石と2本の苔の野筋により構成。そして今回は背後の紅葉が庭園により彩りを与えていた。青空が描かれたスケボーのアート作品も。

もし“重森三玲の庭園が目当て”で訪れたら、アート作品の存在が気になってしまうかもしれないけど。重森三玲自身、決して“庭”だけじゃなく様々なカルチャーを吸収して、独創的な作風にアウトプットに辿り着いた方だと思うので。スケボーぐらい現代的なものが配される姿はすごく良いと思った。

あと廊下から見るとわかりづらいんだけど、紅葉の奥には龍門瀑の石組も実はあって…後ろから3枚目の写真の奥にうっすら見えるのがそれ。
現在の“妙応殿”は比較的近年新しく建て直したもので以前の建物の時はもう少しはっきり見えていた…のかな?なお、初代“妙応殿”は1677年(延宝5年)に後水尾法皇の勅願で建立された歴史を持ちます。

ところでこの庭園を鑑賞している時、通り掛かった方が「庭も綺麗になったね、前は荒れてたのに」とおっしゃられていて。調べたら2018年に日本苔技術協会(JMTA)(本部・新潟市。意外。)によって“この庭園の主役”とも言われる野筋のウマスギゴケが修復されていました。
庭園が修復されて、このようなアート・イベントで庭園ファン以外にも親しんでもらえるのはすごく良いことだよなぁと思います。

■本坊中庭(2・3枚目)
泉涌寺の本坊は『京都御所』内にあった皇后宮の“御里御殿”を明治時代に移築したもので、元は江戸時代後期の1818年(文化15年)の建築。

そんな本坊の中庭、シンプルな庭園だけど背後の紅葉との組合せや、今回の展示作品(中村えい子さんのファイバーアート…で合ってるかな?)が石の模様とマッチしていてすごく良い。
一見これは重森庭園っぽさは無いんだけど、反対側(回廊側)に重森三玲庭園好みの庭石があるんだよなあ…。

■秋篠宮文仁親王殿下御命名“五行の庭”(5~8枚目)
本坊の海会堂と御座所の間にあるもう一つの中庭は、複数種類の苔や紅葉、サツキの刈込など植栽が主体の“五行の庭”。山麓に見える銅造の作品が気になる…。
そして庭沿いの縁側には澁木智宏さんの作品“綿分”が。こちらも庭にマッチしていて面白い(一見庭石のようだけど、よく見ると違う!)。

命名された秋篠宮親王殿下は現在『御寺泉涌寺を護る会』の総裁をつとめておられます。
鎌倉時代から皇室により支えられ、檀家・信徒をもたなかった泉涌寺、明治時代の廃仏毀釈・神仏分離令などに加え戦後の憲法改正で宮内省(宮内庁)が仏閣など宗教団体への資金援助が禁じられたことで経営が困難な状況に。

そこで三笠宮崇仁親王を総裁として昭和中期に設立されたのが『御寺泉涌寺を護る会』で、檀家をもたない中でも近年はその会員の方を対象に“泉涌寺霊園”が運営されています。

写真で紹介した以外のアート作品もジャンルレスですごく良かった!なおアート・イベント『未景』、元々は9月に開催予定だったのが緊急事態宣言などの影響でこの紅葉の時期に延期になっていたもの。来年以降に見たい…という方は来年の夏頃にアート展の公式サイトをチェックしてみて。

【2022年9月追記】 2022年秋の「第58回京都非公開文化財特別公開」に『泉涌寺 本坊・霊明殿』が名を連ねていました。この庭園も鑑賞できるかも。ただしこの特別公開イベントは撮影は不可なことが多いので、そこはご留意ください。

(2021年11月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

JR奈良線・京阪本線 東福寺駅より徒歩20分
最寄りバス停は「泉涌寺道」バス停 徒歩13分
京都駅から約2.5km(駅周辺・参道にシェアサイクルポートあり)

〒605-0977 京都府京都市東山区泉涌寺山内町27 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は1,900以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
PICK UP / COLUMN
最新の庭園情報は約10万人がフォローする
【おにわさん】のSNSから。