18きっぷ旅行者必読。JR米原駅から徒歩7分の美しい江戸時代初期の庭園は“寺カフェ”も注目。国指定名勝。
青岸寺庭園について
「吸湖山 青岸寺」(せいがんじ)は青春18きっぷ愛好家ならほぼ全員が利用・そして大体乗換を経験しているであろうJR米原駅から徒歩7分の距離にある寺院。江戸時代初期に作庭された『青岸寺庭園』は国指定名勝となっています。
米原駅での乗換前後にこれまで何度も訪れています…が、2020年秋に約3年ぶりに訪れたらオシャレなカフェ・カウンターが出来ていてビックリ!水~日曜日にはお寺カフェ『kissa-ko 喫茶去』も営業中。
その歴史について。南北朝時代の延文年間(1356~1361年)に近江国守護・佐々木道誉(京極道誉)が祈願寺として「不動山(太尾山)米泉寺」を創建。
戦国時代に兵火により焼失し、本尊の聖観世菩薩像のみがこの地の小堂の中に残されました。現在は秘仏となっている聖観音像は、室町時代に六角氏頼(佐々木氏頼)の命で仏師・讃岐法眼尭尊の作で滋賀県指定文化財。
江戸時代に入り、二代目彦根藩主・井伊直孝、三代目藩主・井伊直澄の援助を受けた彦根・大雲寺の要津守三禅師により再興。その折に曹洞宗に改宗し、お寺の再興に尽力した伊藤五郎助の諡にちなみ現在の寺名に。
そのお寺の再興の際に初代の庭園が作庭されたものの、彦根城に井伊家の御殿庭園『楽々園』が造営される際に石が供出され、消滅。その後年の1678年(延宝6年)に三代目の住職・興欣和尚がその『楽々園』の作庭にも携わった井伊家家臣・香取氏に依頼し、現在の庭園が作庭されました。
そう言われてみると、楽々園とこの青岸寺庭園ともに石がふんだんに使われた石組の背後が野趣に富む、築山林泉式枯山水庭園という共通項が見られる。楽々園はかつては築山の前の窪みは池泉だったのかなと思わせるけど、青岸寺庭園も基本は苔で流水を表現した独特の枯山水庭園ながら、強雨の日の後には池泉庭園としての姿を見せる二面性のある庭園。
ちなみにこの表現方法は他には長浜市にある滋賀県指定名勝の『池氏庭園』でも見られます。湖北スタイル。
本尊の観音様が住まう補陀落山の世界が表現され、中央の築山が蓬莱島、そしてその奥の三尊石を備えた枯滝石組から水が流れ込む様が表現。
1904年(明治37年)に庭園上部にある書院“六湛庵”が造営され、そこから見下ろす秋の紅葉や冬の雪景色、そして春の桜の風景も美しい(あと置いてあるテーブル、リフレクション狙えそう…?)。
しかしたとえ国の文化財の庭園であっても、現在は庭園の維持管理は援助がないそうで。近年は『青岸寺庭園保存会』が立ち上がったり、そして冒頭のカフェや予約制の精進料理、そして秋には『禅新 -新しい仏教と禅への挑戦-』と題した庭園ライトアップ等も開催されています。
江戸時代には中山道・米原宿に訪れた旅人がみな庭園鑑賞に立ち寄ったという名園。長旅の途中にふらっと途中下車して庭園美にふれるのにも最適な場所なので――現在の米原で乗換る旅人にもぜひ立ち寄ってほしい!大垣行きを一本送らせたら混雑回避できることもあるので実用的にも。
(2014年12月、2015年3月、2016年3月、2018年12月、2020年11月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)