前野原温泉 さやの湯処“銘石の庭”

Sayano Yudokoro Garden, Tokyo

東京で、サウナと天然温泉と枯山水庭園と。“古民家再生の第一人者”建築家・降幡廣信と作庭家・小口基實が再生した昭和のお屋敷と苔の美しいお庭。

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前野原温泉 さやの湯処庭園“銘石の庭”について

「前野原温泉 さやの湯処」(まえのはらおんせん さやのゆどころ)は東京・板橋区にある天然温泉の温浴施設。日本庭園協会賞受賞歴もある現代の作庭家・小口基實さんによる美しい庭園「銘石の庭」があります。

都営三田線・志村坂上の駅を出て中山道の一里塚「志村一里塚」や大手印刷会社工場の前を通り過ぎて徒歩10分、源泉かけ流しの天然温泉が人気のさやの湯処。温浴施設の外観が和風なことは珍しくはないですが、著名な建築家/造園家が関わっている(と公表されている)場所としては実は珍しい!

その歴史について。昭和の時代、この地には特殊金属工業(現・TOKKIN 特殊金属エクセル)を創業した実業家・谷口周氏の邸宅があり、そのお隣に特殊金属工業の工場がありました。

やがて工場は移転、氏も亡くなり邸宅の建物だけが残されます。となると解体されるのが一般的な判断かもしれませんが、創業者孫世代が「この場所をどうにか残したい」との想いからその形を模索され、辿り着いた答えが「温泉」。

源泉は地下1500メートルまで掘削され、2005年にオープン。お食事処『柿天舎』となっているお座敷は元は1946年(昭和21年)に建築された邸宅部分で、氏の雅号「柿天」(してん)から名付けられています。建築を手がけたのは数多くの古民家再生に携わり“古民家再生の第一人者”とも言われる建築家・降幡廣信さん(日本建築学会賞受賞者)。(※なのでこの温浴施設は工業メーカーの関連企業。それも珍しい?)

そして庭園も邸宅の翌年、1947年(昭和22年)に作庭されたものをベースとして、造園家・小口基實さんにより再生されたもの。「柿天舎」の座敷から眺めて正面に築山を組み、その中心にある立石(蓬莱山)から滝が流れ落ち、茶砂で川の流れが表現。座敷をL字に枯流れが続いていく築山式枯山水庭園となっています。

“銘石の庭”と名付けられている通り銘石揃いのこのお庭には、京都の銘石・鞍馬石、伊予の赤石、甲州の御影石、関東からは筑波石、秩父石と大きいだけでなくカラフルに石が揃えられているのも特徴的。広縁の土間に小石が敷き詰められている姿も実力者の庭園らしい素敵な部分で、また庭園との間になるべく映り込みにくいガラスが採用されているのも、施設が庭園を大切にしている気持ちが伝わってくる!(なお受付の前庭や建物周辺などに小口さんのオリジナルも。)

お食事どころでいただけるお蕎麦はこだわりの十割そば。その他、季節のお野菜による様々なメニューも。そして温泉にはドライサウナ、スチームサウナとついつい長居したくなる「さやの湯処」。ここから将来のお庭好きが生まれるかも…?

(2024年5月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

都営地下鉄三田線 志村坂上駅より徒歩10分
JR赤羽駅より路線バス「前野町四丁目」バス停下車 徒歩2分

〒174-0063 東京都板橋区前野町3丁目41-1 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は2,000以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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