重要伝統的建造物群保存地区・八女福島の町並みに残る、素敵な近代和風建築と面白い石庭。八女市指定文化財。
堺屋(旧木下家住宅)庭園について
堺屋こと「旧木下家住宅」(きゅうきのしたけじゅうたく)は国の重要伝統的建造物群保存地区に選ばれている八女福島の町並みに残る商家。明治時代に作られた離れ座敷には乃木将軍こと乃木希典も宿泊したとされ、座敷からは二つの枯山水庭園が眺められます。八女市指定文化財。
2020年のアウェー開幕戦――となるはずだった博多遠征。福岡市からはちょっと離れていますが5年ぶりに八女福島を訪れました。前回訪れた時は重伝建の町並みめぐりがメインで、八女福島と同じく八女市の重伝建・黒木の町並みへ足を運んだ。レンタルしたママチャリでえっちらおっちら往復40km…。
その時は完全に町並み目当てでこの住宅のことは完全にスルー。後からこの不思議な配石の石庭を見て、「なんだこれは…!」と悔しくなっていた場所。個人的に山口県防府市の『月の桂の庭』と並んで気になっていた石庭です。
最寄のJR羽犬塚駅から東へ約6km程の場所に位置する「八女福島」は安土桃山時代~江戸時代には柳河藩・久留米藩の城下町、そして商家町として栄えました。現在も広い範囲に城下町の町割りや町家・商家が多く残っていて、関東で言うと川越のような雰囲気のめちゃくちゃ良い街。それに加えて昭和レトロな「土橋市場」の雰囲気も好きな人はたまらないはず。
この木下家も江戸時代初期の初代・木下市右門から続いた造り酒屋で“堺屋”(さかいや)は屋号。この邸宅は昭和の終わりに八女市に寄贈され一般公開を開始。事前に写真を見ていたのは冒頭写真の石庭だったのですが、「離れ座敷」の意匠もめっちゃくちゃおしゃれで…!
折上格天井に富士山の透かし彫。野原を描いたような欄間に、違い棚。「櫨」と書かれた書もすごく良い。そして1,000本に1本という幻の黒渋柿の柱といった貴重な木材も使われているそう。一方でトイレはタイル張りで、一部和洋折衷な部分が見られるのが近代和風建築らしさがあって楽しい。
庭園は2箇所。この離れ座敷の南方には様々な色の飛び石にサツキツツジ?の刈込、そして大きなソテツが配された枯山水庭園があります。
そしてこの堺屋に入場してすぐ見ることができるのが冒頭の石庭。市の文化財に構成されている一号倉庫という土蔵が隣接。リーフレットにも施設にも庭園に関する解説はなかったのですが、平成4年に一般公開にあたって造園工事を行ったとあるので、もしかしたらこの石庭は現代のものかもしれない。(広さ的にも元々建物があったのかな?)
とても余白がある中で、あえてど真ん中に雪見灯籠とその先に(主峰を表すような)巨石。その左右に巨石を寝かせ、奥にも片側にだけ雪見灯籠。いわゆる“龍安寺以降”“重森三玲以降”のようなデザインからは逸脱しているこういう石庭すごく好きです!
八女福島の歴史や規模を考えると他にも古庭園を残す商家や施設があってもおかしくないのだろうなぁと思う。また訪れたいし、古民家を改修したゲストハウス等に泊まって夜の土橋市場で呑みたい。
(2020年2月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
JR鹿児島本線 羽犬塚駅より路線バス「八女学院校前」バス停下車 徒歩6分
JR久留米駅・西鉄久留米駅より路線バス「西唐人町」バス停下車 徒歩15分弱
JR羽犬塚駅より約6km(駅前の日若屋にレンタサイクルあり)
〒834-0031 福岡県八女市本町184 MAP