洛北の紅葉の名所。“詩仙堂”の庭園を作庭した武将/文人・石川丈山も深くゆかりある寺院の、江戸時代初期の庭園。
蓮華寺庭園について
「帰命山 蓮華寺」(れんげじ)は織田信長や豊臣秀次にも仕えていた加賀前田家の家老・今枝近義が洛中、現在の京都駅近くの元西八条塩小路から移し再興した天台宗の寺院。右京区にも同名のお寺がありますがこちらは左京区。移転した江戸時代初期、1662年頃に作庭された庭園は洛北の紅葉の名所として知られます。
2018年冬に初めて拝観して以来、青もみじ輝く新緑・夏・そして秋の紅葉期…とそれぞれの季節に再訪。『隠れた紅葉の名所』――と最初訪れた時にお聞きしたのですが、決して“隠れ”ていないれっきとした紅葉の名所でした!
江戸時代初期の再興の際には『詩仙堂』を造営した石川丈山をはじめ、狩野探幽、木下順庵や黄檗宗の木庵禅師・隠元禅師といった当時の文化人・著名人が協力。
中でも石川丈山は詩仙堂が割と近くにあり(約3km)それ以外にも『渉成園』、『酬恩庵一休寺庭園』にも関わるなど作庭家としての実績もあるので蓮華寺庭園の作庭にも関与したのでは…?と言われるそうですが、推測であって庭園の作者に関する確定的な史料は残されていないそう。
秋にはその池泉鑑賞式庭園の周辺の紅葉が見事に赤く染まっていてそれはもう絶景――。でも紅葉が落葉したらしたで、冬に見る庭園もその石組が露わになり、庭石に付着した寂びた苔ともども見るべき造形美だと思う。(…晴れた夏の日はその姿があまり見えなかったけど、苔が美しい庭園でもあるので夏は苔むした姿が見所)
渡り廊下(※ここからは撮影禁止)の先の本堂付近には茶人の間では有名だという独特な“蓮華寺型石灯籠”や、造園当初に建立された今枝重直の石碑…などの石造物の姿も。
紅葉の時期には多くの人が訪れ、決して“隠れた名所”ではない――ということがわかったけれど、紅葉の時期以外にも美しく安らげる庭園です。それ以外の時期にもぜひ。
(2018年3月、2019年8月・11月、2021年6月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)