
七代目小川治兵衛(植治)と武者小路千家・木津聿斎(木津宗詮)作庭による南禅寺界隈別荘群の傑作庭園の一つ。
桜鶴苑庭園・看松居について
【施設利用者向け/要予約】
「桜鶴苑」(おうかくえん)は京都を代表する寺院『南禅寺』の参道にあるレストラン・結婚式場。近代に興隆した美術商社・山中商会の初代社長・山中定次郎の邸宅として造営された「看松居」が起源で、その庭園は七代目小川治兵衛(植治)、建築は茶道武者小路千家12代目の木津聿斎(木津宗詮)が手掛けています。南禅寺界隈別荘群の一つで、庭園は食事やウェディング利用者のみ見学できます。
ずうっと訪れたかった場所の一つ。2021年4月に初めて訪れました。(以前は予約できなかったけど、今回は1名でも予約ができた!)
山中商会の海外進出の責任者から初代社長となった山中定次郎の本邸として看松居(かんしょうきょ)が竣工したのは1917年(大正6年)。
2005年に現在の所有者・ワタベウェディングによって結婚式場・京懐石&ダイニング「桜鶴苑」としてオープン。敷地内にはインテリアデザイナー・飯島直樹さんの手掛けた新棟もありますが、かつてのお屋敷の中でもお食事をいただくことができます。
1,200坪の敷地の中に広がる庭園は七代目小川治兵衛(植治)作庭による池泉回遊式庭園。南禅寺界隈別荘群のスタンダードと言える琵琶湖疏水の流れを引き込み、東山の借景を活かした庭園で――
築山に登ると自然味あふれる園路があり、そして平地にはかの“東山大茶会”でも会場となった2棟の茶室を繋ぐ露地庭があり。少し園路を歩くだけで変わる景色が楽しめる素晴らしい庭園!現在は名前に“桜”が入っているけど、元々は“松”が入っていた通り主木はマツ。
植治ともう一人この庭園に関わったもうクリエイターが木津聿斎。大阪の住友本邸『慶沢園』でもこの2人はタッグを組んでいますが、建築だけではなく聿斎の作品一覧にはこの庭園が記されているので、庭園は植治だけではなく聿斎の共作なのではと思う。
先に書いたような庭園の原型だったり沓脱石やなんかは植治らしさが出ている半面、庭園中央に鎮座する石造りの門や、玄関近くの茶室前のサークルを描いたような延段など他の植治の庭では見たことがないようなセンス。
その辺は茶人である聿斎の意向が反映されていたりするのかなと感じるし、植治の庭に対しそれらがスパイスになっている…というかあくまで“お茶のための空間”“露地”として色が強く出ているように感じるのがまたこの庭園の素晴らしさ。名作、傑作!
桜鶴苑の公式では植治の名前しか挙がっていないように、近代の日本庭園は“植治であること”が一つのブランド/印である。その一方で木津聿斎の名前を見ることはあまり無いけれど、おそらく当時の“茶人である”ことの格からすれば、この庭園(建築含めた空間)のプロデューサーはどちらかと言えば木津聿斎だったんだろうなあと想像する。小林武史と桜井和寿みたいな。まあどっちもすごいよねって話なんだけど。
優秀なクリエイターの名前を少しでも多く記せたらと思うし、そんな空間で味わうランチは本当に格別だった。予約が取れる間にまた伺いたい!
(2021年4月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
京都市営地下鉄東西線 蹴上駅より徒歩5分
最寄りバス停は「南禅寺・疏水記念館・動物園東門前」「南禅寺・永観堂」バス停 徒歩5分
〒606-8437 京都府京都市左京区南禅寺草川町55 MAP