螢雪寮(大村家住宅)庭園「創新苑」

Keisetsuryo (Omura House) Garden “Soshinen”, Nirasaki, Yamanashi

韮崎市初の国登録有形文化財の建築となったノーベル賞受賞者・大村智博士の生家に、日本庭園協会賞受賞の山梨・田中造園が作庭した令和の日本庭園。

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螢雪寮(大村家住宅)庭園「創新苑」について

「螢雪寮」(けいせつりょう)は2015年にノーベル賞を受賞した大村智博士の生家。「大村家住宅」として主屋・土蔵が山梨県韮崎市では最初の国登録有形文化財に。その庭園『創新苑』は「日本庭園協会賞」受賞歴のある地元・山梨の造園家、田中徳夫さん率いる田中造園の作庭。

ノーベル生理学・医学賞を始め多くの国際的な賞を受賞、“微生物化学の第一人者”“日本の産学連携の先駆者”とも称される大村智博士。コロナ禍に話題になった「イベルメクチン」の発見〜研究開発に携わった方でもあります。韮崎市名誉市民、山梨県名誉県民の第一号にも選ばれました。

そんな氏の出身地・山梨県韮崎市の神山集落で整備が進むのが『韮崎大村記念公園』。氏の生家『大村家住宅・螢雪寮』と『韮崎大村美術館』をコア施設に、天然掛け流し温泉施設、そば処、そして2025年には近代の有名茶人/数寄者・畠山一清の旧邸(『荏原 畠山美術館』)から移築された茶室「即翁新座敷」なども。
ここでは『大村家住宅・螢雪寮』とその庭園について紹介。

近年、国の登録記念物となった『七里岩』と土木遺産『徳島堰』。それらや棚田を見下ろす、素晴らしい景色/ランドスケープをのぞめるのが神山集落。平安時代からの歴史があり武田家発祥の地とも言われる『武田八幡宮』(国重要文化財)も鎮座するこの地で大村博士は大学(山梨大学)卒業まで過ごされました。

大村家は近代には養蚕を営む農家だったそう。現『螢雪寮』は明治時代初期に建てられたもので、その後明治時代の終わりに現在の規模に。同じく国登録文化財の土蔵は1916年(大正5年)頃に増築されました。
現在は大村家から韮崎市に寄附され、2021年からセミナー、ワークショップ等で地域の方が利用できる施設として運営。なおイベント等がない日でも庭園や土間から建物内の様子を見ることができます。また韮崎市への移住検討者向けのお試し住宅としても活用されています。(またお向かいには大村博士の父母像も)

螢雪寮の玄関横にある池泉庭園は大村博士の親の世代、大正〜昭和時代に作庭されたもの。そして主屋を取り囲む形で、令和時代、2020年から2022年にかけて“日本一の雑木の庭”を目指し新たに作庭された庭園『創新苑』。その名は「復古創新」にちなんで大村博士により命名されました。

公園の様にいくつも入口のある庭園ですが(主屋玄関周りの石畳/延段もとても良いのですが)、檜皮葺の「創新門」からのアプローチが特に力の入れ具合が感じられるアプローチで、青々とした自然石〜京都『桂離宮』を思わせる延段が目を引く。また地元の御影石による石垣も見どころ。

そして主屋の奥にあるお庭は、背後の白山を借景としつつ、元々の傾斜のある地形を活かしながら「白山から流れてくる水流」を感じさせる流れと滝石が楽しいお庭で、主屋から見て上手側からの眺めはより白山と庭園がダイナミックに感じられます。そして芝生エリアからは、先の七里岩など韮崎市街地を見下ろす眺望が◎。

作庭を手掛けた地元・山梨の田中造園さん。現在は日本庭園協会賞受賞者の田中徳夫さんが率いますが、その父・田中松男さんも一部の庭園専門家の間では《安諸定男さんか、田中松男さんか》と評される、業界内で一目を置かれた存在。過去紹介した庭園では甲府市の『東光寺』の前庭や枯山水庭園を手掛けられていて、その他にも県内を中心に和風/日本庭園を手がけます。

ちなみに、ここで紹介するお庭は「上段の庭」という立ち位置だそうで、「下段の庭」は後日紹介の茶室「即翁新座敷」のお庭に続く。

(2025年10月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

JR中央本線 韮崎駅より約3km(駅前にレンタサイクルあり)
JR韮崎駅より路線バス「韮崎大村美術館前」バス停下車 徒歩5分

〒407-0043 山梨県韮崎市神山町鍋山1880-1 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は2,000以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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