近江商人亭(旧田源本家)庭園

Omi Shonin-tei Garden, Echigawa, Shiga

中山道・愛知川宿に残る国登録有形文化財の料亭は、呉服商“田源”の残した近江商人屋敷。“名石工”西村嘉兵衛作の石灯籠など銘石揃いの庭園も。

庭園フォトギャラリーGarden Photo Gallery

近江商人亭(旧田中家住宅)庭園について

【お食事も予約制】
「近江商人亭」(おうみしょうにんてい)は中山道六十九次・65番目の宿場町・愛知川宿にある料亭/お食事処。明治〜大正時代に建てられた近江商人屋敷を活用したもので、「旧田中家住宅(近江商人亭)」として 主屋など5棟が国登録有形文化財。名工と呼ばれ京都の造園家の間にも取引された石工・西村嘉兵衛の石灯籠のある日本庭園があります。

今日も旧街道の雰囲気を残す旧中山道「愛知川宿」。往時は約600mの並びに28軒の旅籠が並んでいたとか。

宿場町の東部に残る黒塀の間口が大きなお屋敷が「近江商人亭」。元の施主は現在東京・日本橋に本社ビルとミュージアムを構える老舗呉服問屋『イチマス田源』の創業家・田中家。
江戸時代後期の1818年(文政元年)創業で200年以上の歴史を持つ田源。初代の田中源治広次は愛知川を本拠として各地を行商して歩き、近江産の麻織物や蚊帳を販売。やがて他の近江商人と同じように京都・江戸/東京に店を構えるようになり、特に東京で成功し近代には愛知川で一番の高所得納税者となったそう。

このお屋敷は1919年(大正8年)頃、三代目田中源治の時代に田中家の本家として建てられました(国登録有形文化財の主屋/広間/茶室/北土蔵/南土蔵のうち南土蔵のみ明治時代から残るもの)。大工棟梁は満島政吉
その後、別の場所で料理店「三角屋」を営んでいた東家にこのお屋敷は譲られ、平成年代の初め頃から湖魚や季節料理をだす完全予約制の料亭として営業/利活用されています。また万城目学さんの小説を原作とした滋賀を舞台にした映画『偉大なる、しゅららぼん』ではのロケ地にも。

「うなぎの寝床」と言われる町家ほど縦長ではないけれど、街道から北蔵、主屋、茶室、廊下、大広間と直線的に並ぶ構造。主屋・茶室からは縦長に、大正ガラスの残る大広間から見て横長でコの字型に囲むように大正時代に作庭された庭園があります。

枯流れを中心に置きつつ、茶室〜大広間を接続する回遊性と、大広間からの鑑賞性が重視されたお庭。高く打たれた飛び石や所々に配された力強い巨石、大きくて丸い伽藍石…。愛知川の隣町:近江五箇荘を拠点とする老舗・花文造園さんが引き継ぐ作庭流派“鈍穴流”のお庭っぽい特徴が多く見られるのですが、花文さんの書籍(『秘伝・鈍穴流「花文」の庭』)の作品リストには載っていない(作風が近いい別の近江の庭師さんなんだろうか)。

これカッコいいな!と思うポイントは縁側の靴脱石の手前の延段(石畳)。「重ねた」ような造形で、更にあえて段差をつけている。現代で言えばバリアフリー無視している、普通に歩いても「つまづきそう」な仕掛けを“あえて”やっている。あまり見ない造形…だからカッコいい!

先の鞍馬石の他、貴船石といった京都の銘石のほか、銘石工と呼ばれた西村嘉兵衛の石灯籠(尚、西村嘉兵衛の灯籠は鈍穴流の庭『教林坊別院 マーチャントミュージアム』にもあります)、そして国指定名勝『寝覚めの床』に見立てた奇石「寝覚石」など石好きな方が好みそうなポイントもたくさん。

愛知川宿にはもう一軒、文化財のお屋敷を活用した料亭があります(『竹平楼』)。竹平楼の方が敷居が高いお店ですが、またいつかご紹介したい所。
旅の途中に多少気軽に文化財のお屋敷でのお食事を楽しみたい方に『近江商人亭』がオススメ!

(2024年11月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

近江鉄道 湖東近江路線 愛知川駅より徒歩5分
JR琵琶湖線 能登川駅より路線バス「愛知川商店街」バス停下車 徒歩5分

〒529-1314 滋賀県愛知郡愛荘町中宿51 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は2,000以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
PICK UP - TOUR / EVENT
MEDIA / COLUMN
最新の庭園情報は約10万人がフォローする
【おにわさん】のSNSから。