三井財閥10代目・三井高棟が自ら設計に携わった近代和風建築。藪内節庵作庭の庭園も美しい!国指定重要文化財。
旧三井家下鴨別邸について
「旧三井家下鴨別邸」(きゅうみついけしもがもべってい)は三井財閥・三井家の別邸として、大正時代に造営された邸宅。主屋・玄関棟・茶室が国指定重要文化財となっており、2016年より庭園とともに一般公開が開始されました。
また近年ではあじさい苑が拡張され、京都の新たなアジサイの名所かも…?という話を小耳に挟み。2020年6月に約3年ぶりに訪れました!あじさい苑ができて、庭園が以前より明るくなった感じがする。その後秋にも再訪して初めてお茶室の中に入ったので、そこからの写真等を追加。
この邸宅の歴史について、パンフレットや公式サイトの情報に加えて京都市公式サイトで公開されている『重要文化財(建造物)旧三井家下鴨別邸保存活用計画案』により詳しい情報があるのでそちらも参考に。
世界遺産『下鴨神社』の南、鴨川デルタから程近くのこの地を三井家が購入したのは明治時代の終わり。三井家10代目・三井八郎右衛門高棟によってまずは三井家の祖霊社・顕名霊社が遷座。その際の建築を手掛けたのは『平安神宮』や東京の国重文『旧前田家本邸』も手掛けた佐々木岩次郎によるもの。ちなみにこの顕名霊社、現在は東京に移築されたそう(非公開)。そして当時の参門が京都御所の近く『有栖館』に移築されています。
それに続き三井家の木屋町別邸の主屋(明治13年の建築)が移転され、1925年(大正14年)に玄関棟と茶室が増築され、現在見る下鴨別邸に近い形として完成。3階の望楼が特徴的な近代和風建築で、この構造は当初木屋町の鴨川沿いに造営された際に東山を眺められるように設けられたものだそう。通常は2階ともども非公開ですが時折特別公開が行われていて、3階の望楼からは大文字山の風景がのぞめます。
なお三井高棟はこの下鴨別邸の設計に自らも関与したとされているのですが、東京の“江戸東京たてもの園”の『三井八郎右衞門邸』(※各地の三井家の遺構・部材を使って造営された)でも高棟が設計に関与した京都油小路邸の意匠が見られるんだそう(あと高棟筆の襖絵も)。意識してなかったなあ、もう一度見に行きたくなってきた…。
庭園の作庭は高棟が茶道藪内流10代目・藪内竹翠紹智に相談の上、その養子・藪内節庵により作庭されたとされています。三井家がこの地に移る以前から存在した園池を元に作庭され、施設の所有が三井家から京都家庭裁判所に移った後はそれなりに荒廃していたようですが、京都『天龍寺庭園』などの御用達をつとめる曽根造園より大正時代の姿に再整備されました。
最後に藪内節庵について。藪内の本家ではなく分家“随竹庵”を継いだ人物にあたるのですが、三井高泰や後に『碧雲荘』を造営した野村財閥・野村徳七や『滴翠美術館』山口吉郎兵衛の茶道の師でもある。Wikipedia見てたら“西尾積翠庵”の名も。吹田にある国指定重要文化財『旧西尾家住宅』の庭園は藪内流の指導の下作庭されたーーと認識していたけど、これって藪内節庵のことなんだろうか。茶室なども手掛けているらしいので今後調べてみよう。
南禅寺界隈の『大寧軒庭園』を手掛けた藪内竹窓に、『両足院庭園』を手掛けた藪内竹心。藪内家ってけっこう作庭のセンスがあった人も多いよなあ。その飛び石を歩くことはできませんが、いつか歩を進めながら庭園を眺めてみたい。
(2017年8月、2020年6月、2020年11月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
京阪本線 出町柳駅より徒歩3分
京都市営地下鉄烏丸線 今出川駅より徒歩20分
最寄りバス停は「出町柳駅前」バス停下車 徒歩3分
〒606-0801 京都府京都市左京区下鴨宮河町58-2 MAP