大河内山荘庭園

Okochi-Sanso Garden, Arashiyama, Kyoto

昭和のスター俳優・大河内傳次郎が自ら30年間作り続けた、嵐山と比叡山の眺望が美しい庭園。数寄屋師・笛吹嘉一郎建築も。

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大河内山荘庭園について

「大河内山荘」(おおこうちさんそう)は京都・嵯峨の地に昭和の映画俳優・大河内傳次郎が造営した山荘と庭園。比叡山や近隣の嵐山~保津峡の景色・借景が楽しめる回遊式庭園で、広大な庭園に点在する“中門”、“大乗閣”、“持仏堂”、茶室“滴水庵”が国登録有形文化財となっています。

2019年の秋に5年ぶりに訪れました!5年前に教えてもらった時には「海外(ヨーロッパだったかな?)方面では評価が高いけどあまり知られていない穴場」というふれ込みで、実際初めて訪れた時は日本人の姿はほぼ無く。久々に訪れた今回、来場者は増えていたけどその殆どは嵐山へ訪れる訪日外国人客という印象でした。竹林の小径もさすがの人の賑わいでした。

時代劇や映画をあまり見ない人間なので大河内傳次郎についての説明は省略…。大河内傳次郎が小倉山・亀山のこの地を手に入れたのは1931年(昭和6年)、34歳の時。そこから64歳に亡くなられるまでの30年間、自ら設計し少しずつ作り上げられました。
しかし本当に“絶景”という言葉が似あう風光明媚な場所で――いくら大スターと言っても、世に数多く居たであろう富豪を差し置いてよくこの場所にこの広大な土地を手に入れられたなぁと感じる。六甲山麓や南禅寺界隈と比べて、嵐山の人気が今程高くなかったんだろうか?

ここからの太字は国登録有形文化財。“中門”をくぐって一段高台にあるのが“大乗閣”。この庭園(別荘)のコアとなる建造物で、書院造・寝殿造・数寄屋造といった日本の伝統的建築様式を組合わせた近代和風建築。
建築を手掛けた“数寄屋師”笛吹嘉一郎さん。名前を初めて見た…と思ったけれど、下記の論文によるとこれまで行った中で山口県の国登録名勝『山水園』や、大阪・池田の『雅俗山荘(旧小林一三邸)』に氏の手掛けた茶室がありました。

茶人木津宗詮と数奇屋大工笛吹嘉一郎による茶室の研究(日向 進, 矢ケ崎 善太郎, 松本 康隆)

そしてここから、鞍馬の赤石混じりの自然石による狭い園路を登ってゆきます。園内にはマツやカエデ類(モミジ)が見られるので紅葉の時期に来たらもっと美しいんだろうけど、あくまでプライベートスペースとして作庭されていて園路も広くないので、めっちゃ混雑するんだろう。…そう思うと、佐賀の紅葉の名所『九年庵』って大河内山荘と似ている気がするなあ。

この地を購入し最初に造営された“持仏堂”の周辺には、嵐山?を借景にのぞむ枯山水庭園があります。そして苔庭を見ながら進んだ先には茶室“滴水庵”が。こちらは明治時代の建築で、大河内傳次郎によるこの地に移築されました。茶室まわりの真黒石の延段も見どころ!(…比較してみると、雅俗山荘の“即庵”の前にもまぐろ石が敷き詰められてるなあ)
大河内山荘は傳次郎の作庭のパートナーとして広瀬利兵衛という庭師の名前が挙がりますが、京都市の他の文献を調べても詳細は不明…。

そして順路の終盤は高台からは保津峡や嵐山の風景、四阿からは比叡山と双ヶ丘、京都の市街地が一望できます。また入場料にはお抹茶とお菓子(モナカ)も含まれているので、周遊し終わったらお休み処でお茶で一服。
現代のスターは“億ション”が一つの到達点なのかもしれないけど、いち俳優がこの風景を手に入れていたと知ったらまた価値観が変わるのではないか。また春にも訪れたい!

(2014年7月、2019年10月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

JR山陰本線 嵯峨嵐山駅より徒歩15分
嵯峨野観光鉄道 トロッコ嵐山駅より徒歩5分
嵐電北野線 嵐山駅より徒歩15分
阪急嵐山線 嵐山駅より徒歩25分

〒616-8394 京都府京都市右京区嵯峨小倉山田淵山町8 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は2,000以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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