大原邸

Ohara-tei Garden, Kitsuki, Oita

国選定重要伝統的建造物群保存地区“豊後の小京都”杵築の藩主御殿を移築と伝わる、千鳥破風の茅葺屋根が豪壮な武家屋敷と日本庭園。大分県指定文化財。

庭園フォトギャラリーGarden Photo Gallery

大原邸庭園について

「大原邸」(おおはらてい)は“豊後の小京都”大分県杵築市の城下町に江戸時代後期に造営された家老屋敷。「旧大原家住宅」として主屋・長屋門が大分県指定有形文化財で、杵築を代表する武家屋敷として一般公開されています。当時から残る池泉回遊式の日本庭園も。

2017年に国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された杵築の城下町。その地区の指定名が「杵築市北台南台」となっている通り、中央の谷(メインストリート)の北・南に位置する台地に武家屋敷街が形成され、それぞれに古い町並みを残す独特の城下町となっています。

北台、南台ともに観光向けに公開されている武家屋敷がありますが、その中でも代表的なものが大分県指定有形文化財にも選ばれている「大原邸」。どちらかと言えば北台の方が上級武家屋敷街だったそうで(河口から距離を取るため?)、大原家も杵築藩主・松平家に仕える重臣(家老上席)でした。

ただ大原家がこの地に屋敷を構えたのは幕末(文政年間/だいたい1820年代以降)から。それ以前には杵築藩家老・中根斎(近代の著名な教育者・中根不覊雄の父…とは別人?)の屋敷や、杵築藩の御用屋敷『桂花楼』がこの地にありました。

その建築も江戸時代の後期より残るもの。長屋門をくぐると、これはただの武家屋敷じゃねえ…!といきなり感じさせられる立派な千鳥破風の茅葺屋根を持つ玄関が。上級とはいえ、こんな立派な玄関を持つ武家屋敷って珍しいし、それが千鳥破風の茅葺屋根というのも珍しい…。
新潟の豪農屋敷『旧目黒邸』、江戸の庄屋屋敷『天明家』、や日本三名園『岡山後楽園』の「延養亭」を連想する。=他は大地主や藩主なので武家屋敷としてはやっぱ珍しい…。なお《杵築藩の(松平家の)御殿を移築した》とも伝わるそう。

その玄関・茅葺屋根のインパクトを思うと、お屋敷の中はやはり江戸時代の武家屋敷で決して華美ではなくシンプルでシュッとしている、その中に“美”があるのですが、その書院造り建築から眺める庭園が――素晴らしい!

主座敷の正面に中島(亀島)を持つ大きな池泉、そして右手奥には大きな築山と四阿が。四阿へと登ると、その背後のメインストリートや南台の眺望が楽しめる。
そして玄関から張り巡らされた飛び石は、(大原邸より新しい年代だけど)隣町・日出町の国登録文化財庭園『的山荘』を連想するし、低めの化灯籠をアイキャッチとする所は中津市の国登録文化財庭園『平田氏庭園』を思い出す…と、豊後国の庭園文化(の江戸時代のベースの部分!)が感じられる。

主座敷から近い所の大きな踏分石が「更待月」の様な形をしているのも良いし(南東向き、ここから月を眺めていたのかもしれません)、お屋敷に茶室・茶の間はないけれど、茶庭・茶人好みの様な風流な意匠が散りばめられている…。

玄関前のソテツが樹齢200年と言われるので(=このお屋敷が造営・移築された年代?)、庭園も江戸時代後期の庭園。杵築市は『妙経寺庭園』『長昌寺庭園』と二つの寺院庭園がそれぞれ文化財庭園となっていますが、歴史・規模から考えても――この大原邸の庭園はそれらと同等の歴史的価値、美術的な価値があるのでは!?大分を訪れる庭園好きにはぜひ立ち寄って欲しい場所。

(2023年4月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

JR日豊本線 杵築駅より約4.5km(駅にレンタサイクルあり)
JR杵築駅・大分空港より路線バス「杵築バスターミナル」バス停下車 徒歩6分

〒873-0001 大分県杵築市杵築207 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は2,000以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
PICK UP - TOUR / EVENT
MEDIA / COLUMN
最新の庭園情報は約10万人がフォローする
【おにわさん】のSNSから。