直方のレトロな街並み沿いに建つ、近代の洋風医院建築を活かした美術館の茶室と露地庭。国登録有形文化財。
直方谷尾美術館・茶室“鉄牛庵”について
「直方谷尾美術館」(のおがたたにおびじゅつかん)は直方市の市立美術館。戦前の1941年に建造された洋館(旧奥野医院)、和館(旧奥野家住宅主屋)、茶室“鉄牛庵”(旧奥野家住宅茶室)の3棟が国登録有形文化財。「直方市美術館本館」として経済産業省認定の近代化産業遺産にも構成。和館と茶室の間に庭園も残ります。
2020年12月に初めて訪れました。直方に訪れるのは3年ぶり…前回は宿が博多近辺に取れずなんとか取れたのが直方みたいな感じで訪れて、そこから飯塚で“筑豊の五大炭坑王”のうちの2つ、『旧伊藤伝右衛門邸庭園』(国指定名勝)と麻生太吉の『麻生大浦荘』を訪れました。直方はレトロな商店街はぷらぷらしたけど庭園があるとは知らなかった…。
直方のレトロな商店街は小倉から長崎を結ぶ形で江戸時代に整備された“長崎街道”に沿って構成。この美術館や関連施設『アートスペース谷尾』、そして美術館向かいの『向野堅一記念館』といった近代の洋館が長崎街道沿いに建つ国登録有形文化財です。
炭坑夫を相手にした精肉販売で事業を広げた実業家・谷尾欽也が1992年(平成4年)に奥野家を購入し、自らが収集したコレクションを公開する私立美術館として改装・開業。
氏が逝去された後の2000年に美術館と美術品が直方市に寄贈され、翌年2001年から市立美術館に。現在は『直方歳時館』と同じく公益財団法人直方文化青少年協会が指定管理者として運営を行っています。
旧奥野医院は元は1913年(大正2年)に建てられ、昭和初期に一度焼失しその後再建されたもの。表の外観こそ石造の重厚さがあるけど、中は木造建築で奥に進むにつれ近代の和洋折衷の建築という感じ(和館の大部分は現在は作品の収蔵庫になっているので、見学できるのは洋館・和館の接続部分まで)。
美術館の最奥にあるのが茶室「鉄牛庵」。瓦葺で四畳半の茶室と六畳の待合から構成。和館から茶室へと向かう露地庭には二基の石灯籠や丸く刈り込まれたサツキや山茶花など。やけに大きな石塁に主木が植えられているのが特徴的で——石塁の上にも石組が配されているしなんのために設けられたのかが気になる。
訪れたこの日は新館で市民による作品展が開催されていて、展示室は割と人が出たり入ったりといった印象で。直方歳時館ともども「市民に馴染んでいるんだな」と感じた。商店街はその長さの割には決して盛り上がっていない一方で、文化施設にちゃんと地域の人が訪れているのはとても興味深い。あまり観光向けの街ではないけど、でもまた行きたい直方。
(2020年12月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
JR福北ゆたか線 直方駅より徒歩10分強
平成筑豊鉄道 南直方御殿口駅より徒歩10分
筑豊電鉄 筑豊直方駅より徒歩15分強
〒822-0017 福岡県直方市殿町10-35 MAP