国の重要伝統的建造物群保存地区『近江八幡』の町並みに溶け込む、海外の“アール・ブリュット・コレクション”とも連携したアート・ミュージアム…近代の町家の庭も。
ボーダレス・アートミュージアムNO-MAについて
「ボーダレス・アートミュージアム NO-MA」(ぼーだれす・あーとみゅーじあむ・のま)は国の重要伝統的建造物群保存地区『近江八幡』の町並みに建つ町家(町屋)を活用したアートギャラリー/ミュージアム。『東京国立博物館』で要職を歴任した美術史家・野間清六ゆかりの邸宅でもあります。
『ラコリーナ近江八幡』や『教林坊』をはじめとする寺院など「近江八幡市の庭園」は紹介していたけれど、近江八幡の中心部(重伝建地区)の町家・商家の庭園をちゃんと見たことがなかった。
2022年秋、国際芸術祭『BIWAKOビエンナーレ』で現代アートを楽しみつつこのエリアの古民家の庭園も見学しました。
近江八幡の町並みの中でも印象的な大きな土蔵と板塀のT字路からすぐ。重伝建地区の南のエリアに建つこのギャラリー/ミュージアムは、1930年(昭和5年)に建築された京風数寄屋造りの町屋を活用して2004年(平成16年)に開館しました。展示入替時を除き通年で公開。
かつての所有者・野間家は古く江戸時代にはこの近江八幡に本家を置きながら下総国・結城で「角大」近江屋久右衛門の屋号で醸造業を営み、結城藩・水野家の御用達としての地位を築き“結城御三家”とも呼ばれたとか。
その家業は明治時代に畳まれましたが、この野間家で生まれ育った野間清六は前述通り近代〜昭和に美術史家として活躍、日本のみならずフランスの勲章も受章されています。この町屋はそんな野間家の分家(本家はそのお向かい)。
その名の通り「ボーダレス」(境界のない)という言葉に想いが込められたこのミュージアムでは、障害のある人たちによる造形表現と、現代アートを「分け隔てなく」紹介・展示することをコンセプトに各種企画展が催されています。
障がい者向けに限らず、地域の方々向けのワークショップやイベントの実施、更には海外/ヨーロッパの「アール・ブリュット・コレクション」と連動した取り組みも。
なおその背景には、戦後に日本の障害者福祉を切り開いた第一人者で“日本の障がい者福祉の父”と呼ばれた糸賀一雄さんが晩年は滋賀県を拠点とし『近江学園』を創設、園内でも造形活動が取り組まれていたことがあります。調べると滋賀県は障害者のための施策を先進的に取り組んでいる自治体だということもわかってくる…。
昭和初期に建築された近代和風建築らしく、ギャラリー内は欄間などに素敵な意匠の透かし彫りが見られ、またこじんまりながら前庭として町家の和風庭園が残ります。今回訪れた時には黄色のツワブキの花がたくさん咲きほこっていた!
現代アートファンも町並みのファンの方もぜひ訪れてみて。
(2022年11月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
JR琵琶湖線 近江八幡駅より2km(徒歩25分)*駅にレンタサイクルあり
近江八幡駅より路線バス「八幡堀八幡山ロープウェー口」バス停下車 徒歩6分
〒523-0849 滋賀県近江八幡市永原町上16 MAP