“根津美術館”の庭園を作らせた鉄道王・根津嘉一郎の実家。国登録有形文化財の建築と富士山を借景とした庭園。
根津記念館(旧根津家住宅)について
「根津記念館」(ねづきねんかん)は東武鉄道の初代社長をつとめ“鉄道王”とも呼ばれた根津嘉一郎の実家。「旧根津家住宅」として主屋、長屋門、土蔵が国登録有形文化財となっています。2019年夏に初めて訪れました!
なお根津嘉一郎ゆかりの庭園としては、東京・表参道の『根津美術館』や熱海に造営した別邸『起雲閣』があります。東京にいた頃はなんとなしにFROM-1st〜根津美術館へと足を運んでいたけど、根津嘉一郎の美術的センスが味わえる場所は東京・青山だけじゃなく各地にある。
旧青梅街道に面した根津家は当地の大地主という家柄で、嘉一郎は村長をつとめるなど地元の有力者となった後に東京へ進出。“甲州財閥”と呼ばれた甲斐国出身の実業家グループの一人として様々な会社の経営に参画し、東武鉄道のみならず西武鉄道、南海鉄道など全国の鉄道会社の経営陣に名を連ねました。
現在の東武グループのルーツ“根津財閥”の創始者であり、現在の東武鉄道・東武百貨店の社長も初代根津嘉一郎の孫がつとめています。あの規模の鉄道会社が意外と同族経営。(少し前までの西武もそうか)
初代根津嘉一郎が地元に残したこの旧宅は、嘉一郎関与の元、甥の根津啓吉により1932年(昭和7年)から約4年間で整備されたもので、国登文の主屋、長屋門、土蔵はいずれも昭和初期の建築。嘉一郎の故郷での迎賓館としての役割と、当地の地主屋敷としての側面があったとされます。
2003年に根津家から山梨市に寄贈。ただし山梨市観光協会のサイトに載っている開館へ向けたPDFを見るとーー整備前は割と荒廃していたようで。長屋門から正面に位置する「青山荘」は2008年の開館へ向けて設計図から復原したものであり、富士山を借景にのぞむ“笛吹川庭園”も作庭は平成年代。
“青山”というのは嘉一郎の茶人としての号ですが、青山荘の一角にある茶室の名前が“燕子花”というのは、思わず『根津美術館』の庭園を思い出す。
根津記念館庭園の見どころはやはり借景の富士の山並み。そして訪れた夏にはサルスベリのピンクの花が沢山見られたので、四季折々の花木が楽しめそう。ちなみに“笛吹川庭園”にあるクロマツ“大磯の松”はその名の通り、根津の大磯にあった別荘から移されたものだそう。熱海だけじゃなく大磯にもあったのならば、他にもありそうだよな…。
また建物内部では初代根津嘉一郎の生涯や近代の東京にも影響を与えた甲州財閥に関するパネルやゆかりの品々の展示がされています。同行してくれた甲府出身の友人も「知らなかったー」という気付きが多かったみたいなので、地元の人にもより訪れてほしい庭園。もちろん、根津美術館ファンにも!
(2019年9月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
JR中央本線 春日居町駅より徒歩15分
JR中央本線 山梨市駅より徒歩20分強(※駅前にレンタサイクルあり)
石和温泉駅・春日居町駅より路線バス「ベイシア前」バス停下車 徒歩10分(平日のみ)
〒405-0032 山梨県山梨市正徳寺296 MAP