京都の桜や紅葉の名所として人気の寺院は、“京都五山”別格の京都の代表的な禅寺。国宝の方丈に小堀遠州が作庭した枯山水庭園“虎の児渡しの庭”は国指定文化財(国指定名勝)。
南禅寺方丈庭園について
「南禅寺」(なんぜんじ)は京都を代表する寺院の一つで、室町時代に三代目将軍・足利義満によって定められた“京都五山”で別格扱いとされた、日本の禅宗では最高クラスの寺院。臨済宗南禅寺派の大本山。
国宝指定されている方丈の前に広がる枯山水庭園“虎の児渡しの庭”は小堀遠州により作庭されたものと伝わります。国指定名勝。また境内ではそれ以外にも複数の枯山水庭園が見られます。
格式が高い分いろんな情報があるけど、お寺の説明は端的に。鎌倉時代には亀山天皇がこの地で離宮“禅林寺殿”を営まれていました。なおこの名は近隣の『永観堂』こと禅林寺に由来しているそう(禅林寺の方が先にこのエリアにあった)。その後、亀山天皇が深く帰依した『東福寺』の三代目住持・無関普門禅師(大明国師)を開山として離宮の一部を禅寺として創建しました。
ちなみに残りの一部が現在も当時の庭園が残る『南禅院』。南禅院庭園の作者と言われる夢窓疎石は南禅寺の住職も務めました。
室町時代〜安土桃山時代には応仁の乱含め何度か火災に見舞われたため、ランドマーク的な大きな三門(国指定重要文化財)をはじめとして、現在残る建造物は江戸時代以降のもの。
国宝の方丈は“大方丈”と“小方丈”に分かれます。大方丈は桃山時代に豊臣秀吉が京都御所に寄進した“清涼殿”を、1611年に後陽成天皇の命により移築した――という説と、女院御所の対面御殿を移築したものという説と。また小方丈は寛永年間(1624〜1644年)に後から加わった建築で、伏見桃山城の小書院を移したものだそう。双方にある、狩野探幽など狩野派の障壁画も国重文。
国指定名勝となっている枯山水庭園が“虎の子渡しの庭”と言われるのは横並びで配された石が、まるで大海を泳ぐ虎の親子を表現しているように見える――ため。ちなみに同じ小堀遠州作庭と伝わる洛北の『正伝寺庭園』は“獅子の児渡しの庭”と呼ばれます。石と調和するようバランス良く配されたサツキの刈込やマツ、モミジも見所!
そしてこれ以降の順路も様々な庭園が見られます。いずれも手掛けているのは南禅寺の御用庭師・植彌加藤造園さん。まず小方丈庭園“如心庭”は昭和41年に作庭された石庭で、当時の南禅寺派管長・柴山全慶老師の指導による“心”を現すデザイン。
一面の苔の美しい“六道庭”はその翌年、昭和42年に作庭されたもの。“六道輪廻”という仏教の世界観を表現した庭で、作庭当時は白砂の中に景石があったそうですが――今となってはスギゴケに覆われた姿も美しい。訪れた時にはサルスベリの花もちょうどきれいだった。
その先も昭和年代に作庭された枯山水庭園“華厳庭”や茶室“窮心亭”、池泉鑑賞式庭園“龍吟庭”に、その最奥にある茶道宗偏流八世・宗有宗匠より寄進された茶席“不識庵”、比較的近年作庭されたこれまた苔が美しい“環源庭”と。回廊から色んなお庭が見られて楽しい。そして順路の最後、玄関すぐ横の「滝の間」では滝を眺めながらお抹茶を味わえます。
ちなみに、唐破風屋根の大玄関前に広がる敷石。これは京都市の市電が廃線となった際に払い下げられた軌道敷の板石なんだそう。鉄道好きの方がよく見たらグッと来るものがある…かも?色んな時期にボーッと眺めに行きたい庭園。
(2013年1月、2016年5月、2019年8月、2020年11月、2023年1月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
京都市営地下鉄東西線 蹴上駅より徒歩8分
最寄バス停は「南禅寺・疏水記念館・動物園東門前」バス停 徒歩10分
〒606-8435 京都府京都市左京区南禅寺福地町86 MAP